iPadProは、もはやタブレット端末ではない 市場の92%のノートパソコンより高性能

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iPad Pro 10.5インチは同じサイズのままオールスクリーン化され、11インチのディスプレイを備える(筆者撮影)

MacBook Air、iPad Proには共通点がいくつもある。

その1つはオーディオ再生能力だ。MacBook Airはまったく新しいスピーカーシステムを備え、またiPad Proにはこれまでの4箇所のスピーカーそれぞれに高音用のツイーターと低音用のウーハーを備え、合計8つのスピーカーが内蔵された。

これらの新しいハードウエアとソフトウエア処理により、いずれの製品でも、非常に迫力のあるステレオサラウンドに包まれるような体験を実現している。サラウンド性能の向上は2018年モデルのiPhoneでもウリにしていたポイントだった。

また、もう1つ、今後のアップルやテクノロジー企業にとって重要なマイルストーンになるのが、リサイクルされたアルミニウムを100%使用した製品作りだ。

アルミを削った金属を溶かして「再生」

アップルの環境への取り組みは今に始まったことではない。iPhoneがヒットする以前から取り組んできたことであり、9月のイベントではiPhoneを長持ちさせるという、販売台数と売上高が重要なビジネスに逆行しがちな価値を惜しみなく付加してきた。

今回の新製品群はいずれもアルミニウムボディが用いられているが、アルミを削った金属を再び溶かして再生し、品質、耐久性、仕上がりのいずれも犠牲にしない製品へと蘇らせたのだ。

今回発表された各製品の外装は、100%リサイクルアルミニウムによって作られている(筆者撮影)

アップルに聞くと、もちろん製造コストは上昇するという。しかし新たな採掘をする必要がなく、製造工程の二酸化炭素排出量も50%弱削減することができるという。正しいことをするためのコストをいとわない姿勢を改めて強調した。

iPhoneだけで年間2億台を販売し、MacやiPadも年間6000万台以上が販売される。それだけの規模の台数を、金属をはじめとする資源を採掘しながら製造し続けられると考えるほうが難しいのだ。

こうしたリサイクルのマテリアル利用は、テクノロジー企業が果たす社会的責任の1つであると同時に、今後のアップルが持続的に製品を作り続けるうえで、避けられない生存戦略でもあるのだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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