クセが強い!北朝鮮「テレビCM」不思議な世界

製造工程の紹介がマニアックすぎる

2005年の映画『春の香り』に、こうした変化が見て取れる。同映画の中心的モチーフは、科学の世界しか知らない女性研究員と、現実にもまれてきた男性研究員の対立だ。この男性研究員は退役軍人で、将軍様の思想を熱烈に信奉することによって学のなさを埋め合わせている。

目を引くのは研究分野だ。映画に登場する若き研究員は、生活必需品や重工業製品ではなく、化粧品製造に必要な「無菌水」の研究を行っている。人民のために良質な化粧品を生産せよ、という金正日氏のお達しが背景にはある。

外国人には宣伝内容が理解できない?

2011年の映画『冬に咲く花』は、女性工員の無私の奮闘によって、ある繊維工場が大復活を遂げる物語だ。工場視察に現れた金正日氏は、工場で働く女性たちが髪を質素なゴムバンドで縛っているのに気づき、豪華なヘアピンを届けるよう部下に命じる。きらびやかなヘアピンで、1人ずつ女性工員の髪をまとめていく女性管理職。彼女は工員たちにこう訓示する。「将軍様を本当の母とお慕いしなさい」。

2000年代に入ってからは、北朝鮮にとっては革命的ともいえるメディアが国中に浸透していった。広告である。

北朝鮮のテレビや雑誌などは、自称「純国産車」の「フィパラム」(「口笛」の意)や、「大同江(テドンガン)ビール」、高麗人参製品、化粧品の広告やコマーシャル(北朝鮮では「紹介映像」と呼ばれる)であふれかえっている。

北朝鮮の広告は今のところ、模範的な共産主義事業の紹介と通常の販売促進のちょうど中間、といった感じのものになっている。たとえば、朝鮮料理の高級レストランのコマーシャル。場所などの基本情報や満足げな客の感想に加えて、最高指導者を称える声が繰り返し出てくる。最高指導者が、この店の料理長にレシピを伝授したことになっているのだ。

小型セダン「フィパラム」のコマーシャルでは、車名を考案したのは金正日氏だと告げられる。この車は朝鮮労働党のニーズに合わせて設計されたものであり、金正日氏による「先軍政治」の新たな成果となるものである、といった具合だ。

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