8%の軽減税率で生じやすい「不合理な事実」 実質値上げに気づかず受け入れてしまう懸念
まずは消費者としてみた場合、勘違いしがちな数字のトリックができることが予想されます。
私は行動経済学が好きなのですが、この分野でよく使われる「ヒューリスティック」という概念を考えてみると、消費税改定後に陥るかもしれない心理的なわなが見えてきます。
ここで言う「ヒューリスティック」というのは、じっくりと論理的に考えるのではなく、直感や経験則で瞬時に判断してしまうことです。
気が付かずに値上げを受け入れてしまう危険性
たとえばこんな例を挙げてみましょう。現在1060円(税込)で売っている商品があるとします。税抜価格は982円です(982×1.08≒1060)。仮にこの商品に軽減税率が適用されると考えた場合、今後も8%の税率は変わりませんから、当然のことながら消費税引き上げ後も売り値は変わらないはずです。
ところが、仮に消費税引き上げ後に1080円と価格が表示されたとしましょう。これがもし軽減税率が適用されない商品なら税率は10%に上がりますから、その価格は正しいと言えます(982×1.1≒1080)。
しかしながら、もし軽減税率が適用されるのであれば税抜き価格は1000円(1000×1.08=1080)ということになり、実質的には18円の値上げとなります。
この場合、1080円という価格が勘違いをさせるポイントなのです。なぜならこれまでの税率8%という数字が頭の中に入っていますから、1080円という価格を提示されると、ごく自然に1000円+消費税8%(=80円)という公式が頭の中に浮かんでくるからです。本来なら消費税10%で1100円のところを軽減税率のおかげで1080円になった、と誤解をしてしまいがちなのです。
もし以前の税抜価格982円を認識していれば、そんな勘違いは起こらないでしょうが、前の価格をいちいち覚えているということはほとんどありません。結果として、気が付かないまま値上げを受け入れてしまうことになりかねません。
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