世界が「孤独の弊害」に大騒ぎしているワケ イギリス孤独男性の生きがい創出作戦とは?

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今回、コンファレンスの舞台となったイギリスは孤独対策の先進国だ。約7年前に、高齢者の福祉に携わるNGOの間から、高齢者の孤独を問題視する声が上がり、そこから民間の慈善団体を中心として、多種多様な取り組みが進められてきた。そうした草の根の動きを受けて、これ以上看過できないと、政府も動き始め、今年1月、世界で初めての孤独担当大臣が任命されたといういきさつだ。

無数の調査研究が行われ、孤独があらゆる年代の問題であることが明らかになり、対策の対象は幅広い層に広がっているが、特に高齢者向けは実に手厚い。たとえば、孤独を感じる高齢者の電話を受け、会話をする「シルバーライン」。すべての運営費は民間の寄付や宝くじの収益金などで賄われる。24時間365日対応するのは資金的にも人員的にも容易ではないが、特に深夜やクリスマスなどのホリデータイムには孤独を感じる人が増えるという理由から夜間や休日でも受け付けている(こうした実例については、拙著『世界一孤独な日本のオジサン』の中でも詳しく紹介している)。

電話をかけてくるのは女性が多い。しかし、これは男性に孤独な人が少ないということを意味するものではない。男性のほうが自分が孤独であることを認めたがらないという傾向があるからだ。女性は「話し相手が欲しい」「寂しい」などと開口一番に自分の気持ちを話し始めるが、男性は「鶏肉の調理の方法が知りたい」「今日のサッカーの試合の結果が知りたい」などといった質問から始まり、話が進む中で、「妻が亡くなり」「仕事を辞めて」などといったように不安を打ち明けるようになるという。

男性のほうが深刻な孤独の問題を抱えやすい

孤独を不安に思う気持ちは自分の弱さを認めること。「男らしさ」という価値観に縛られがちな男性は、孤独を肯定的に受け止めて対処しようとするか、寂しい気持ちを押し殺そうとするケースが多い。そういった観点から、自らサポートを求めて、動こうとする人が少なく、男性のほうが深刻な孤独の問題を抱えやすくなっている。

そんな男性たちが上手に、自主的につながりの輪に参画できるような試みが次々と編み出されている。男性は面と向かっておしゃべりをするより、ゲームやスポーツ、仕事など何かを一緒にすることでコミュニケーションしやすいという人も多い。であれば、「一緒に何かをする場」を作ればいい、という発想で、「居場所づくり」が進められている。

「Men’s Shed(男たちの小屋)」の様子(筆者撮影)

たとえば、Men’s Shed(男たちの小屋)。公民館のような場所の一角に、DIYの道具を集め、そこで一緒にモノづくりをするという趣向だ。モノづくりを一緒に楽しむばかりではない。

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