世界が「孤独の弊害」に大騒ぎしているワケ

イギリス孤独男性の生きがい創出作戦とは?

ただ、「1人で不安だ、寂しい」という感覚そのものは、心身に大きなストレスを与え、心臓や脳、血管などあらゆる病気を招くリスクを高めるとされ、早死にする確率が50%上昇するという。短期的に不安な気持ちに耐えなければいけない場面も多々あるし、そこから学び取ることも多い。しかし、それが、数カ月、1年、10年と長期化、慢性化することが大きな問題なのである。

このコンファレンスでも、登壇者から「孤独は空腹やのどの渇きと同じ」という言葉が繰り返された。そうした不安な気持ちは身体からの「人とつながりなさい」というサインであり、無理やり自分の中でなだめつけたり、我慢するものではない、ということだ。コンファレンスはイギリスで孤独対策のイニシアチブをとるNGOが主催したもので、世界各国から約300人が集まり、終日、活発な議論が交わされた。

社会的つながりは人間の本質的欲求

NGOの代表は、孤独に対処するためには「つながること」「アクティブでいること」「奉仕活動など、役に立とうとすること」「気づくこと」「学び続けること」などの視点が大切と指摘。孤独に関する研究の第一人者と言われるアメリカ・ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授は孤独の健康影響について解説したうえで、「社会的つながりは人間の本質的欲求である」とし、「水や食べ物同様、つながりの質が大切だ」と訴えた。

アメリカの前公衆衛生長官、ヴィヴェック・マーシー氏(左、筆者撮影)

アメリカの前公衆衛生長官のヴィヴェック・マーシー氏は全米中を視察する中で、「いかに孤独が、多くの疾患や恐怖や怒り、不安感などといった感情に結び付き、社会をむしばんでいるかを目の当たりにした」と語り、孤独感が現代人の幸福感をそいでいると問題提起した。

このほかにも、スペインやデンマーク、ノルウェー、アイルランドなどさまざまな取り組みが紹介されたが、共通していたのは、社会が一丸となって取り組むべき喫緊の課題であるという認識だ。「孤独」はある種のスティグマ(負の烙印)を伴い、多くの人が孤独を抱えながら、根本的な解決策を自発的に取ることが難しい。であれば、孤独の不安を抱える人に対して、「自己責任」と突き放すのではなく、その気持ちに寄り添い、解消するためのインフラ・環境づくりが社会として急務だととらえられている。

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