「ライブコマース」はアパレル業界を変えるか 1万人の1度より100人のファンを増やしたい

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相互間でのやり取りがライブコマースの醍醐味ですが、視聴者の方たちがコメントをしやすい問いかけも難しいと言います。

たとえば、番組冒頭でいきなり「この商品に対してどう思いますか?」と投げかけた場合、質問が大味すぎるので視聴者の方は返答に窮します。第3回の配信では、商品の説明を行った後に、「この商品の製造に何カ月くらいかかると思いますか?」など、返答をある程度限定する形で問いかけを行いました。

コメントがあっても、うまく拾えないときもあります。商品を手にしながら解説するときもありますし、パソコンやスマホをつねにチェックしていると目線がカメラから外れてしまいます。コメントが届いたときに内容を伝達してくれるようアシスタントに頼んだり、商品を手に取ったときにズームアップしてくれるようカメラマンに頼んだりと、準備段階での事前共有もスムーズな進行には不可欠です。

スマホ1つで配信できるのもライブコマースの魅力。視聴者の方たちもほとんどがスマホでご覧になっています(写真:ファクトリエ提供)

 これまでの配信から見えた傾向としては、開始10分前後にアクセス数が集中することです。今はテレビを観るときでも、録画をして追っかけ再生をすることが多いように、スタート時刻に合わせてスタンバイをする機会が減っています。

配信時間はもちろん伝えていますが、つい忘れてしまっていて20時を過ぎてから観る方も多いため、開始10分前後にピークを持っていくように流れをコントロールしています。

顔を見せて、直接語りかけることのチカラ

現在はファンの創造が目的ですが、今後は購買チャネルとしての道も開けていくと考えています。すでに購買に結びついた事例もあり、カシミヤマフラーは紹介した直後に完売しました。

今後は、たとえば、質問コーナーを設けて視聴者の方たちから問い合わせを受け付け、それに答えを返すことで購買につながるというケースもありうるでしょう。

メールでも質問はできますが、顔を見せているコンシェルジュが直接語りかけることで心はより動きやすくなります。顔を見せている農家さんの野菜を買いたくなる気持ちに近いかもしれません。どういう路線を取るにせよ、今積み重ねているコミュニケーションのノウハウは間違いなく活きるはず。手探りではありますが、これからもライブコマースの可能性を模索し続けていきます。

山田 敏夫 ファクトリエ代表

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やまだ としお / Toshio Yamada

1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学し、グッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員に就任。2015年経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」を受託。年間訪れるモノづくりの現場は100を超える。

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