母の日に蘭?「サイバー農家」宮川洋蘭の戦略

1370人の島から世界へ、根底にある思考とは

熊本県宇城市の戸馳島に拠点をかまえる宮川洋蘭。地域資源の洋蘭を用いた地域活性に取り組んでいる(写真:宮川洋蘭提供)

「農家にとって、一番大切な農具は何だと思う?」

1999年、当時学生だった3代目の宮川将人さんは実習先の農家でこの質問を投げかけられました。発する答えは、ことごとく外れ。正解はパソコンでした。

農家は事業拠点が土地に固定されてしまうため、フットワーク軽く動いてPR活動を進めることができません。しかし、インターネットを有効活用すれば、自分たちの拠点にとどまりながら情報をいたるところに発信できます。まだ情報発信という言葉が浸透していない20年前に、「自分は“サイバー農家”になる」と宮川さんは心に決めました。

2017年、宮川洋蘭が運営している『森水木のラン屋さん』は、4万店以上のショップが出店しているネット通販サイト・楽天市場で「ショップオブザイヤーCSR賞」を受賞。『森水木のラン屋さん』はラン(蘭)の製造から販売、流通までを一気通貫で行っており、この受賞は農家で初の快挙でした。ただ、サイバー農家としての歩みは決して順風満帆だったわけではなかったようです。

恥ずかしい失敗談もストーリーに落とし込む

『森水木のラン屋さん』を立ち上げたのは2007年のこと。良質なランをリーズナブルな価格で提供し、いつでもどこでも買える仕組みを作れば売れるに違いないという目算とは裏腹に、最初の2年間は赤字が続きました。

同業者からは「農家が運営する蘭のショップなんて誰が信用して買ってくれるのか」という反対意見も多かったそうです。購入者からたまにくる「ありがとう」のレビューだけを頼りに、夫婦でパソコンに向き合う日々。その状況を打破するきっかけとなったのは、2009年に夫妻の間に誕生した長男でした。

「あまりにも嬉しくて、Webで出産セールをしました。『私たち、お父さんとお母さんになりました。幸せのお裾分けとしてお花を届けます。みなさん祝ってくださいね』という自作自演のイベントを行ったところ、それまで20万円だった月商が200万円になったんです。1億点が並ぶ楽天市場の全商品の中で、“母思い”と名付けた洋ランのデンドロビュームはランキングを駆け上がり、最終的には1位になりました」(宮川さん)

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