2019年もアメリカ株が上昇すると読む理由 バンガードの敏腕ストラテジストに聞く

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一方で、株式市場では、バリュエーションが高水準(指標面からみて割高)となっていることも、特に2018年初めから懸念材料となってきました。そうした意味でいえば、このところの相場下落はバリュエーションが適正水準に近づいている兆しであり、今後の上値余地を残した健全な調整といえるでしょう。

――レムコさんは新興国を専門とされていますが、日本の投資家は新興国にも投資したほうがよいとお考えですか。

日本の投資家に限らず、世界の投資家はポートフォリオの一部を新興国市場へ投資することを考えるべきです。バンガードは、外国証券を含め、幅広く分散しているポートフォリオがもたらす利益をすべての投資家が享受すべきだと考えています。

もちろん、ポートフォリオのアセットアロケーション(資産配分)は個人投資家の投資目的にもよりますが、一般的に大半の投資家にとっては、外国証券の割合は資産全体の20~40%が望ましいと考えます。さらにその外国証券のうち、約25%を新興国の証券とするのがよいでしょう。つまり、投資家のリスク許容度によって、幅広く分散しているポートフォリオの5~10%を、新興国の証券と考えてみるのもよいでしょう。

また、新興国市場のポートフォリオのボラティリティ(価格変動)に対しては長期的な視点で臨み、定期的にリバランスすることをお勧めします。そして、これも私たちの投資哲学に関連しますが、掲げている投資目標とリスク許容度に応じてポートフォリオ内容――つまり投資先の市場と資産クラスとそれぞれの割合――を調整することを投資家の皆さんにお勧めします。

長期投資では「4つの基本原則」を念頭に

――日本でも少しずつ投資家の裾野が広がってきました。長期的な資産運用をしていくうえで、どんな投資戦略をとるべきですか。

バンガードが推奨する投資戦略は、私たちのビジネスの核となる投資哲学に基づきます。「明確で適切な目標設定」「幅広く分散しているファンドへの投資」「コストの最小化」「規律ある長期的な視線に立った投資」。この4つの基本原則を含む哲学は、非常にシンプルです。すべてのお客様に4つの基本原則を念頭に置いてもらいながら、必要に応じてファイナンシャルアドバイザーにもご相談することをお勧めします。前述の投資哲学をご参考に、市場の短期的なパフォーマンスに左右されないよう心掛けながら、長期・分散投資を考えてみてはいかがでしょうか。その中で、私たちの組成している金融商品が皆さんの資産形成の一助になれば幸いです。

森永 康平 マネネCEO/経済アナリスト

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もりなが こうへい / Kohei Morinaga

証券会社や運用会社にてアナリスト、エコノミストとしてリサーチ業務に従事した後、複数金融機関にて外国株式事業やラップ運用事業を立ち上げる。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、各法人のCEOおよび取締役を歴任。現在は法律事務所の顧問や、複数のベンチャー企業のCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。株式会社マネネTwitter

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