2019年もアメリカ株が上昇すると読む理由 バンガードの敏腕ストラテジストに聞く

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――市場に影響を与えつつある米中貿易摩擦については、どうお考えですか?

アメリカと中国の間の貿易摩擦は現在、アメリカと中国以外の国に生じているそれとは比較にならないほど大きな問題となっています。アメリカと中国の経済はさまざまな面で補完し合っています。両大国の通商関係が著しく悪化すれば、両国の経済にとって問題となるだけでなく、ほかの諸国にも悪影響を及ぼします。また米中の貿易摩擦は、特に長引いた場合、世界の株式市場や債券市場にとっても問題になります。

報道によると、ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席は11月のG20サミット(11月30日~12月1日)で会談を行う予定であり、これは安心材料です。もしこの会談が実現して成功したと受け止められれば、市場は前向きに反応するでしょう。

一方で、特にハイテク分野を中心に、特定分野の貿易不均衡を是正する必要があることを合理的に主張することもできるでしょう。しかしこれは大きな賭けであり、米中という経済大国が貿易不均衡について双方に満足のいく解決策を早期に見いだす必要性があります。それが両国の利益となります。

金利上昇局面では、株価はほとんどの場合上昇している

――日本の投資家も今回の世界同時株安を受け、今後の見通しに不安を抱いています。

市場の調整や弱気相場は往々にしてあるということを忘れてはいけません。実は、1980~2017年において、世界全体の株式市場では相場調整は11回、弱気相場は8回起こっています。つまり、平均として2年に1度は「目を引く大きな下落」が起こっているということになります。

また、歴史を振り返ってわかるもう1つのことは、地政学的出来事に関連した株価下落はそれほど長引くものではないということです。

投資家は「金利の上昇は低調な株式リターンの前兆だ」と考えて、いささか不安に駆られているのかもしれません。推論すれば、金利が上昇した場合、債券の魅力が株式に比べ増すこと、そして経済成長に歯止めをかけることから企業収益に重石となるとの考えなのでしょう。

しかしながら、バンガードの調査はそうはならないことを示唆しています。過去50年における11度の金利上昇局面に目を向けると、株式市場のリターンは1度を除いてすべてにおいてプラスとなっていることがわかります。さらに、こうした局面全体においては平均の年率リターンがおよそ10%と、それほど懸念材料となるような低いパフォーマンスではありません。

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