自殺した17歳息子の遺影を公開した父の思い

暴力で係争中顧問に学校は平然と指導させた

翼さんを指導していた問題の男性教師は、いわくつきの人物だった。

会見を開いた父親の新谷聡さん(撮影:梅谷秀司)

前任校である盛岡第一高等学校でバレー部の顧問をしていた際の教え子・バレー部員だった元生徒が、男性教諭から受けた暴力によりPTSDを発症。男性教師はこの元生徒に暴力行為を行っていたことを一部認め、昨年11月に盛岡地方裁判所一審判決で暴力を認定されていた。現在も元生徒側は控訴している。

「昨年、盛岡一高裁判で、一部とはいえ暴力指導が認められた時点で、岩手県教委が男性教師を不来方高バレー部の顧問から外し再教育するなどの措置を講じていれば、翼君が命を落とすことはなかった」(草場弁護士)

ひいては、この教師自身のためにもなったはずだ。2つ目の問題を起こすリスクから免れることができたかもしれないのだから。

聡さんは会見で「冷たくなって紫色に変わってしまった息子と対面したときは、なぜこんなことをしたのかまったくわからなかった。数日経って、裁判で係争中だったことを初めて知り、そんな教師に自分の子どもを預けていたのかと愕然とした」と困惑した表情で話した。

「部活ノート」廃止の不可解

男性教諭が問題を起こした盛岡一高と不来方高校、実はこの両案件を結ぶ出来事がある。

盛岡一高の元生徒が提訴した2016年は、翼さんは不来方高校の1年生。聡さんはちょうどその年、「1年生の途中で部活ノートが全員廃止になったと妻から聞いています」という。

運動部活をする高校生や中学生が「バレーノート」「サッカーノート」と名付ける部活ノート。その日の練習内容や、良かった点、悪かった点などを記入し、顧問に提出するという慣習は多くの学校にある。特に全国大会を目指すような強豪校はノートを活用している。そのため、遺族は翼さんから「ノートが廃止になった」と聞いて驚いたことを記憶している。

発端は、上級生部員が、教師に指導や態度をあらためてほしい旨を記して提出したからだったという。その記述内容に男性教師は腹を立てたようで、それ以来「ノートは書かなくていい」となった。

男性教師が訴えられている盛岡一高のパワハラ裁判は、刑事は2013年に、民事は2015年から開始し現在も係争中。

「あれ以上指摘した上級生とやり取りしてしまったら、自分のまずい指導の証拠にされると思ったのかもしれない」(聡さん)

訴えられているのに、新たにまずい指導が発覚すれば裁判にも不利になる。部活ノート廃止は、自身の「2つ目のパワハラ」を隠す意味も含まれていたのではないか。翼さんらバレー部員に対し、自分がパワハラ行為をしている自覚があったのかもしれない。

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