「18歳成人」への引き下げで混乱必至の成人式 成年と成人は違うという意見まで登場

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成人式と言えば、着物を着て着飾る女性も多い。

しかし、18歳の高校生となれば、大学入学前で受験にかかる費用もかさむ。保護者の懐具合が良くないということもあり、制服での出席者も増える可能性が指摘されていることから、楽しみが減るという意見がある。また、呉服業界にとってこれは死活問題になる可能性がある。

お酒、タバコについては、未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法とも民法改正に連動せず、20歳のままであるので(法律名は変更)、成人しても2年間はお酒もタバコも禁止だ。お酒を自らの責任においてたしなむことができるのが、大人というイメージも強いが、お酒のない祝い事となる。

また、成人式を開催する自治体の悩みは18歳成人式となった場合、2022年度の成人式の対象年齢が18歳、19歳、20歳と、通常年の3倍になってしまうということだ。運営方法、開催の時期など課題が多い。

こうした中、民法改正以降も、神奈川県逗子市は「20歳を祝う成人の集い」、京都市は「20歳のつどい」として現行通り20歳を対象年齢とすることをこの夏に表明した。多くの自治は検討中のようだが、自治体によってバラバラになる可能性がある。

「成年」と「成人」は違うのか

そもそも「成人」と一般に言うが、法律上は「成年」である。

通常、双方は同じ年齢を意味するが、民法改正が決まって、「成年」と「成人」は違うという意見も聞かれるようになってきた。「成人」とは「大人、一人前」といった意味だが、多くの日本人は民法改正が決まった今日でも20歳をそのようにとらえているように思う。

筆者自身、大学の授業で同年代の学生に成年年齢が18歳に引き下げられ、親の承諾なしに買い物や投資などを行える代わりに、未成年者保護制度がなくなることを説明し、どう思うか聞いているが、大多数の学生が今のままでよい、18歳成年は早すぎるという意見を持っている。

『大学生が知っておきたい消費生活と法律』(慶応義塾大学出版会)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

民法改正推進派にはそうした認識こそが甘えであり、自立を阻害しているということになるのかもしれない。

だが、成人式は20歳のままがふさわしいという国民意識がある中で、若者を守る強力な法的武器である未成年者取消権が18歳、19歳で消失してしまうのには未だに納得いかない。

成人式の考えの混乱をみても成年年齢の引き下げはもっと慎重であるべきであったと感じる。

対して、日本財団が10月にスタートした、17歳から19歳の男女800人を対象とした「18歳意識調査」では初回調査の中で「18歳成人」について調査している。その結果は、

・18歳の6割が自分を「子ども」と考えている
・成人年齢が18歳に引き下げられることについては6割が「賛成」
出典:「日本財団『18歳意識調査』調べ」

というものだった。多くの世論調査などと異なるが、ここでは”まだ未熟だが大人になりたい”という当の18歳の心理が表れているように思う。自立心を育みながら、トラブルに巻き込まれないようにするための環境整備は大人たちの責任だ。

すでに、前述の連絡会議でも議論になっているが、消費者契約法など消費者の権利を守る法律の強化が必要であり、若者の消費者教育の充実が不可欠であると筆者は考えている。今後の動きに注目したい。

細川 幸一 日本女子大学名誉教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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