「計画運休」定着と福知山線脱線事故現場の今 その後のJR西日本は「安全最優先」となったか

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同社安全推進部の担当者は、計画運休に臨む社内の様子をこう語る。

計画運休、JR西内部の声とは

「風速や雨量の規制により各線区や支社単位で列車を止めるのは日常茶飯事ですが、面的にエリアを設定して運休するとなれば経営判断になる。しかし、運休による収入減が気になって判断が鈍るなんてことは、私の知る限りありません。安全最優先で、躊躇なく止める雰囲気はあると思う。今回は、駅間で列車を立ち往生させた痛い経験から学び、絶対に繰り返さないというのが目標になっていた」

とはいえ、自然現象が相手だけに、2014年のような「空振り」も想定される。

「気象庁のデータのほか、気象情報会社とも連携して時々刻々と変わる状況を注視しますが、最後は賭けのようなもの。ただ、何度か計画運休をするうちに『外れても仕方がない』と、ご理解いただけるお客様の声も増えてきた気はします」

福知山線事故後、JR西の事故やインシデントを検証し、安全施策を提唱してきた安部誠治・関西大学教授によれば、計画運休のように対象が100万人単位となる大規模な事前防災の取り組みは、海外にも例がないという。

「近年の自然災害は激甚化しており、その意味では、JR西の取り組みは先進的と評価してもよいと思う。ただ都市圏の鉄道は、安全が大前提ではあるが、安定輸送も大きな使命。今後は予測の精度をいっそう高めること、運行再開後の立ち上がりを迅速にすること、それに、事前アナウンスの向上が課題になる。HPやマスコミ向けの発表だけでなく、駅での掲示をもっとわかりやすくしたほうがよい。関西はインバウンド需要も多いため、英語や中国語での告知を充実させることも必要だろう」

と、概ね高評価を得ている計画運休だが、安全は災害対策だけではない。JR西が「安全最優先」となるには、また別の課題も残されている──。

(後編は11月1日掲載予定)

松本 創 ノンフィクションライター

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まつもと はじむ / Hajimu Matsumoto

1970年、大阪府生まれ。神戸新聞記者を経て、現在はフリーランスのライター。関西を拠点に、政治・行政、都市や文化などをテーマに取材し、人物ルポやインタビュー、コラムなどを執筆している。著書に「第41回講談社本田靖春ノンフィクション賞」を受賞した『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(東洋経済新報社、のちに新潮文庫)をはじめ、『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B、2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(西岡研介との共著、講談社)、『地方メディアの逆襲』(ちくま新書)などがある。

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