「ぴあ」が部数を偽装、他の出版社は大丈夫?

担当編集者による印刷部数詐称が内部告発で表面化

信頼ベースの業界慣行

書籍は出版社から取次業者を経て書店へと流れる。本の販売価格の35~40%は書店と取次の取り分なので、出版社の取り分は基本的に販売価格の60~65%。その中から著者に印税(通常は売価の約1割)、印刷会社に印刷代、製紙会社に紙代を支払う。

出版社には、著者に執筆を依頼し原稿を作り上げる編集担当、取次や書店とのパイプ役を担う営業担当、紙を購入する購買担当、印刷会社とやり取りする制作担当などがいる。印刷しても取次が引き取らなければ書店に流れないので、印刷部数の決定権は基本的に営業が握る。

一般に著者と出版社の力関係は圧倒的に出版社が上。印税は売価×印税率×印刷部数で計算するので、印刷部数は印税計算の基礎になる重要な数字だが、編集者から伝えられた印刷部数のウラを取る手段は、著者には事実上ない。

出版社経由で印刷会社から印刷証明を取って確認することは理屈のうえでは可能だが、それは編集者の顔を潰すことになるので、以降仕事がもらえなくなる覚悟がいる。

それでも不正は起きないとされてきたのにはそれなりの理由がある。

大手の出版社で恒常的に著者にウソをつき続けることは、担当編集者の人数が多ければ口止めが困難な上、営業や制作が編集者にウソをつくというのも現実的ではない。印刷部数や実売部数は、編集者の人事考課上、重要な要素になるからだ。

ウソがばれて出版社としての信用を失うリスクに比べ、経済的利益も少なすぎる。印税のごまかしで編集者個人の懐は潤わないし、会社が得られる利益はごくわずかだ。

本件では印税率は通常の1割より高い15%。売価933円の15%は140円。4万部ごまかして浮く利益は560万円だ。120億円ものキャッシュを持つぴあに、会社ぐるみでごまかすインセンティブはないように見える。

それではなぜ事件は起きたのか。「会社の意思決定は当初から10万部」(ぴあ広報部)なのに、編集者が著者にウソをついたのはなぜか。

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