香港の「計画運休」は、ここまで徹底している 気象台の発令で鉄道どころか金融市場も閉鎖

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なお、シグナル8が発令されたからといって、地下鉄は即、全面運休とはならない。むしろ一斉に自宅を目指す人々が駅に集まり急激な需要増が起こることから、MTRは地下鉄の運行数をピーク時レベルまで一時的に増加させるという決まりがあり、次のような「運用規則」が別途設けられている。

●地下鉄の運行数はピーク時のレベルまでいったん上げる。

●ホームなどの混乱を抑えるために、案内職員を追加投入する。

●線路に異常が生じたときに備え、技術者や保線職員ら200人余りのスタッフが待機。

●万一に備えて、地下鉄全線で3万人以上に配布できる分の食料や水を用意する。

地上を走る区間は飛来物や架線切れのリスクがあるため、シグナル9、10が発令された際には自動的に運休となる。台風の進路状況から、シグナルの8から9への「掛け替え時間」はほぼ予想できるので、市民は気象台からの情報を基に「交通機関の計画運休がありうる」と類推することが可能だ。

一方、シグナル8であっても地上区間では「危険が察知された場合は随時運行を止める」としている(このケースでは計画運休にならないので、若干の混乱が起こる可能性がある)。一方、地下区間はそもそも台風の影響を受けないため、シグナル9、10が出ていても区間短縮や間引きしながらも運行を続行することが多い。

情報はスマホにプッシュ通知で

台風などの非常時における情報伝達について、MTRは「自社のアプリをインストールしたうえで、プッシュ通知モードで最新状況を把握すること」と明確に告知している。香港は世界でも有数のデジモノ好きが集まる街だが、街を行き交う人は老若男女ほぼ全員がスマホを持っている前提で案内を行っているところが面白い。

MTRはすべての電車に動画、または電光ニュースを流せる仕組みを完備しているうえ、各駅には液晶案内パネルもある。これらを駆使すれば、たいていの情報は利用者にすばやく告知できると見てよいだろう。

ちなみに、バスは横風の影響をより受けやすい2階建て車両が多数を占めることから、シグナルの発令よりも早いタイミングで運休となる路線もある。香港の公共バスの運行規則には「台風襲来時には2階部分の窓を開けること(窓を開けることにより風圧がいくらか抑えられるため)」という一文があるが、もはや窓が開かない冷房バスばかりとなったためこの規則は準用されなくなった。

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