香港の「計画運休」は、ここまで徹底している 気象台の発令で鉄道どころか金融市場も閉鎖

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シグナル8以上が発令された場合は学校、商店、オフィス、金融機関などが休業し、証券取引所も閉鎖されるため、ほぼ完全に街の機能がストップする。就業時間中に発令された場合、職場の管理者は従業員の安全確保を前提に帰宅させることになる。

つまり、鉄道が「計画運休する」というよりも先に、一般企業が台風の進路などを見ながら「計画休業」するといった表現のほうが正しいかもしれない。

台風襲来時における企業の措置は、香港政府の中で労働政策を担当する「勞工及福利局」がまとめた「台風襲来時における従業員対応にかかわるガイドライン(Code of Practice in times of Typhoons and Rainstorms)」の記載内容が根拠となっている。

つまり、一定の強さ(シグナル8以上の発令)の台風が襲来したら、従業員は就業規則に沿って出社義務がなくなるので、出勤時点でシグナル8以上が発令されれば「堂々と無断欠勤」ができる仕組みとなっている。「あくまでガイドラインなので法的根拠はない」という見方を示す専門家もいるが、香港のほとんどの企業は慣習的にこれらの記述を被雇用者と結ぶ就業規則の内容の一部として盛り込んでいる。

「台風で欠勤」給与減額は契約違反

シグナル8が発令される際は、今後の台風の進路予想などから「予測されるシグナル発令時刻」が明らかになるため、多くの事業所では「早じまい」する。発令前後には市内中心部の地下鉄駅が帰宅を急ぐ人々で大混乱となるため、マネジャーが頃合いを見て、シグナル8発令を待たずに仕事を打ち切ることも多い。周りの会社も仕事を止めるので、よほどの緊急性がなければ止めてしまってもいい、という判断も働くわけだ。

しかし、ホテル、レストランや旅行会社など一部のサービス業においては、任意で営業を続けるところも存在する。その場合は、マネジャークラスの従業員が帰宅困難となったスタッフなどとともに対応することになるようだが、通常レベルのサービスは見込めないと考えるべきだ。コンビニも営業していることがあるが、欠品が多かったり、スタッフが少ないためレジ待ちの列が長かったりといったことが起こる。

なお、「台風を事由とする給与や賞与の減額、有休の消化扱いとすることは契約違反」と明確に決められている。逆に、たまたま「帰宅困難」になって残務を手伝った社員はそれなりの「特典」が期待できるようだ。

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