「ばらまき」の前に企業への刺激が最優先 日本経済再生のカギは「法人税減税」(下)

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なお、政府が産業政策を講ずる際には、補助金などで特定分野に資金をばらまくことは慎むべきである。たしかに、iPS細胞など、研究期間が長く不確実性が大きい分野などについては、「呼び水」的な意味合いで政府の一定の関与が必要だ。しかし、基本的な考え方としては、政府は弊害が生じない範囲で最大限の規制緩和を行ない、民間の自由な創意工夫が発揮されるような公平な土俵を作り上げること――いわゆる「イコールフッティング」の整備にこそ最大限の努力を行なうべきなのである。

第三の課題は、雇用者の所得を増加させる「分配政策」の強化だ。

過去の歴史を検証すると、わが国では「売上高増加→賃金増加→物価上昇」というサイクルが存在する。すなわち、わが国では売上高が増加した半年から1年後に賃金が増加し、その約半年後に消費者物価が上昇する傾向があるのだ。

ただし、2000年代以降、「グローバリゼーション」の進展などを背景に、売上高の賃金に対する先行性が崩れつつある点には一定の留意が必要である。今後、売上高の増加が賃金の増加に適切に波及していくような「トランスミッションメカニズム(波及経路)」を政策的に強化する必要があることは間違いない。

安倍政権は「労働者への分配を増加させた企業に対する減税措置」を強化する方針だ。この政策は一定の評価ができるものの、企業部門から家計部門への所得移転を強化するためには、政・労・使の三者が痛みを分かち合うことを通じて「賃上げ」を実現していく、「逆ワッセナー合意」とも呼ばれる仕組みの強化が不可欠だろう。

筆者は、安倍政権が、ここまでの成功に慢心することなく、さらなる政策課題に取り組むことを大いに期待している。(『Voice』2013年12月号より)

※本稿をさらに詳細に分析した内容が、下記サイトに掲載されています。

http://www.dir.co.jp/research/report/japan/outlook/

熊谷 亮丸 大和総研 チーフエコノミスト
くまがい みつまる

1966年、東京都生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。2010年より現職。各種アナリストランキングで合計7回、1位を獲得。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などのコメンテーターとして活躍中。著書は、『パッシング・チャイナ』(講談社)、『消費税が日本を救う』(日本経済新聞出版社)など。

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