「ばらまき」の前に企業への刺激が最優先

日本経済再生のカギは「法人税減税」(下)

わが国では、これまでさまざまな研究開発減税や設備投資減税が打ち出されてきたが、輸出企業や大企業に恩恵が偏りがちだった。法人実効税率の引き下げは、非製造業やサービス業、中小企業への幅広い恩恵を通じて、「デフレ脱却」に資することが予想される。

われわれの試算では、法人税の実効税率が10%引き下げられた場合、わが国の海外生産比率は1.5%ポイント低下し、日本から海外向けの輸出が2.3兆円増加する。輸出の増加はマクロ経済に波及し、国内の生産金額を4.7兆円押し上げる。上記の試算結果には、海外から日本への投資拡大の影響などは含まれておらず、実際の法人税減税の経済効果は、さらに大きなものとなるだろう。

政府・日銀に求められる政策対応

最後に、今後政府・日銀に求められる政策対応を指摘しておきたい。

筆者は、安倍政権発足当初から、「アベノミクス」は日本経済復活の起爆剤となりうる経済政策であり、その基本的な方向性はきわめて適切であると主張してきた。

アベノミクスの3本の矢のなかで、とくに滑り出しが好調なのは、第1の矢である「大胆な金融政策」だ。日銀は今後の経済状況次第では、消費税増税が実施される2014年4月前後に追加金融緩和に踏み切る構えだ。

日銀の大胆な金融緩和スタンスを受けて、ボールは完全に政府に投げられた。今後、日本政府に課せられた課題は以下の3点である。

第1の課題は、財政規律を維持することだ。

たしかに「国民の生命・財産の保護」は国家にとってもっとも重要な仕事である。しかし、「安心・安全」の美名の下に、なし崩し的に公共投資が拡大すれば、経済効率は低下し、財政赤字が積み上がってしまう。

社会保障制度の抜本的改革を断行し、毎年1兆円以上のペースで増え続ける社会保障費に歯止めをかけることも、喫緊の課題であるといえよう。

第2に、現時点で「アベノミクス」は、金融政策や公共投資などのカンフル剤が中心となっている。だが、持続的な経済成長を実現するためには、「岩盤規制」とも称される既得権が強い分野(農業、医療・介護、労働等)に斬り込んだ抜本的な規制緩和と、法人実効税率の引き下げ――すなわち、第3の矢の強化が不可欠である。

わが国の産業構造を俯瞰すると、今後の成長分野は、(1)効率性、他産業への波及効果、成長性が高い「環境分野」、(2)雇用吸収力が大きい「医療・介護を中心とするサービス分野」が柱となる(図表2)。

グラフでは丸の大きさが雇用者数を示しているが、成長性が高い「環境分野(電気機械、化学、輸送用機械)」の雇用吸収力は高が知れている。わが国の雇用者数に占める製造業のウエイトはわずか18.8%にすぎない。したがって、雇用を吸収する意味では、「混合診療」の解禁などを通じて、「医療・介護を中心とするサービス分野」を刺激することが不可欠である。

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