「ばらまき」の前に企業への刺激が最優先 日本経済再生のカギは「法人税減税」(下)
世界的な税制改革の潮流とは
今回の経済対策の中身は、総じて家計部門よりも企業部門に手厚くなっている。一部マスメディアからは「国民から消費税を召し上げておきながら、企業に分配するとは何事だ」「金持ち優遇だ」といった批判も聞かれる。
しかし、安倍政権の政策は決して間違っていない。
民主党政権下で、3年以上にわたり、「子ども手当」を中心とする「分配政策」が採られたが、日本経済はまったくよくならなかった。
国際的な常識として、経済政策の正しい手順は「成長戦略→分配政策」だと考えられている。将来的に「分配政策」を実行する必要があるにせよ、まずは分配の原資をつくることが先決である。やはり、日本経済を再生するためには、法人税減税などを通じて企業を元気にすることこそが「1丁目1番地」なのである。
実際、わが国の「労働分配率(企業が稼いだお金のなかで個人に分配された割合)」は、過去20年間おおむね横這い圏で推移しており、企業が稼いだお金の一定割合が個人の懐に入っている様子が確認できる。
とりわけ、法人税の実効税率を引き下げることが、わが国にとってもっとも重要な課題である。
世界的な税制改革の潮流は、消費税増税により税収を安定化させる一方で、経済を活性化する観点から法人実効税率を引き下げる方向にある。わが国でも、グローバルな法人税率引き下げの潮流に照らして、日本企業の競争力の維持・向上などの観点から、課税ベースを広げると同時に、実効税率を引き下げることが望ましい。法人実効税率の引き下げは、企業活動を活発化させるとともに、諸外国の投資家に対する「日本が大きく変わる」という象徴的なメッセージなのである。
法人税率の引き下げに対するステレオタイプの批判は「企業優遇」「金持ち優遇」というものだ。
しかし、こうした批判は、法人税の本質を完全に見誤っている。
そもそも、法人税は実体のない「法人」が負担するものではない。最終的に法人税を負担しているのは、企業の経営者、従業員、株主、債権者、顧客といったさまざまな「ステークホルダー(利害関係者)」なのだ。
したがって、法人税を減税すれば、その好影響は日本経済全体に広範に波及する。
たとえば、企業の税引き後利益が増加すれば、設備投資や配当が増加する。さらに、株価が上昇すれば、「デフレ」が解消し、経済の好循環が作用するきっかけとなりうる。そして、最終的には家計の所得増が個人消費の活性化につながることが期待されるのである。