日本にオバマが出ない理由 設計ミスの弁護士“大増産”計画

 教育インフラを作り直せ

これだけ乱立すれば、教員・スタッフの供給が追いつかない。充実したカリキュラムなど組めるわけがない。有名大学では、司法試験の考査委員でありながら、試験直前に答案作成を指導する教授まで現れた。進行しているのは、一段の予備校化だ。詰め込み型と決別し、広く社会の異才を法曹界に呼び込む「改革」の理念は今いずこ、である。

政府の規制改革会議の福井秀夫・政策研究大学院大学教授は「ボンクラでも増やせばいい」と言う。「(弁護士の仕事の)9割9分は定型業務。サービスという点では大根、ニンジンと同じ。3000人ではなく、1万2000人に増やせばいい」。

だが、庶民が弁護士に依頼するのは一生に一度か二度の買い物だ。たまたまハズレ、ではたまらない。

質の低下は、弁護士“業界”にとっても命取りだ。大量に輩出された低劣な弁護士が食うに困り、不正に手を染めれば、国家権力が弁護士自治に介入する危機を招きかねない。

村山副会長は「質については、入り口から出口まで徹底的に再検討せねばならない」と言う。だからといって、「量」を等閑(なおざり)にしていい、ということにはならない。地裁支部の担当域内に弁護士が1人しかいない地域がまだ22カ所もある。追求すべきは、質と量の二兎である。

高山俊吉弁護士は「法曹人口の激増に絶対反対」を掲げて今春の日弁連会長選挙に立候補し、反主流派としては空前の43%の票を集めた。その高山弁護士は「激増」には反対だが、増員自体は可としている。問題は増加の「斜度」だ。時間を貸し、質を高めるインフラを作り直せ、という主張である。「(司法試験の合格者を教育する)司法研修所を最高裁から日弁連の管轄に移し、修習期間は2~3年に延長すべし」。

法科大学院がきっちり教育するという前提で、司法研修所の修習期間は2年から1年に短縮された。が、当てにならないとわかった以上、法科大学院は淘汰を進める以外ない。ケータイ弁の増殖が示すように、“事後”のOJTを担うべき法律事務所にも教育余力がない。OJTの一部肩代わりを含め、司法研修所の改革・拡充を図るのは一案だろう。

来年5月、「司法改革」のもう一つの柱、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が始まる。弁護士は裁判官のみならず市民を説得する「質」を獲得せねばならない(それこそオバマ氏の資質である)。そのためにも司法研修所の改革は必須だ。

弁護士だけの問題ではない。「日本が侵略国家とは濡れ衣」と懸賞論文に書いて解任された防衛省の田母神俊雄前空幕長。4月、イラクの航空自衛隊の活動を違憲とした名古屋高裁判決について平然、「そんなの関係ねぇ」とのたまわっていた。

法曹界が一体となって、「二兎」を追う改革に取り組み、司法の権威を再確立する時である。

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