生徒全員を救う事を目指さない「N高」の戦略 川上量生「初年度は1500人しか来なかった」
吉田:ちなみにN高の宣伝方法というのは、基本は口コミなんですか?
川上: N高の場合は、割と最初からネットなどを使ったマスの宣伝は成功したんです。それでもやっぱり学校選びって、アプリをダウンロードするのとは違いますから。人生を賭ける選択って、当たり前だけど重いんですよ。ですから営業する先は、やっぱり親と先生ですね。その人たちにN高というのが普通の選択肢でありえるんだ、ということを納得してもらえるよう地道にやっています。そこで重要なのは実績ですよね。
吉田:今のところ上がっている実績は、本人たちが楽しそうとか、そういうことでしょうか。N高生本人が楽しそうであるとか。
川上:N高に限らずどの通信制高校でも楽しそうだっていうメッセージは発信するじゃないですか、スーパーの大売り出しとかと一緒で(笑)。そういうメッセージは体験者による口コミでしか信じてもらえないメッセージだと思います。だからマスに向けたメッセージとして伝えているのは、先進的な教育をやろうとしている、普通の高校ではできないようなことをやろうとしている、ということですね。それも次第に広まっていると思います。
吉田:社会的には、東大合格者数何人とか、甲子園出場みたいなものはまだ出ていないわけですよね。そこが付いてくるとどんどん普通の選択肢になっていくんじゃないかなと思いますね。
合格者リストを出したら志望者が激増
川上:なるでしょうね。保護者だけじゃなくて生徒自身にとってもそこがいちばん大きいポイントだと思います。今年、N高は2回目の卒業生が出ました。そして去年はやらなかったんですけど、今年は合格した大学のリストを人数込みで公表したんです。これって通信制高校では初めてで、今までどこもやっていないんですよね。なぜなら、公表できないから。
吉田:……そういうレベルではなかったということですね。
川上:累計のものは出しているんですけどね。しかも大学名だけで、人数も出さず「これまでに卒業生が合格した大学リスト」というのを出しているところがほとんどです。だから僕らは「今年この大学に何人合格しました」というのを発表したんです。そんなに大勢はいません。早慶が1人ずつと、東工大くらい。それでもやっぱり、願書の申し込みがものすごく増えました。
吉田:へぇ~。世間が見ているのはその辺なんですか。