ノードハウス氏の貢献は、政治にも影響を与えた。「2100年までの気温上昇を、産業革命以前と比較して摂氏2度未満に抑えなければいけない」というアメリカや日本も署名をした法的拘束力のある国際的合意(コペンハーゲン合意、2009年)がある。
ノードハウス氏は41年前の1977年という早い段階で2度以上の気温上昇があった場合に、重大な社会への影響が生じるという論文を発表した。この論文がきっかけとなり、議論が始まったのだ。コペンハーゲン合意ができると、すぐに各地域への影響を発表するなど、常に早い段階で結果を出してきた。これは誰もなしえなかったことである。
ローマー氏の功績とは?
環境・エネルギーに関する学際的な研究者であれば、誰もが計算面での貢献でノードハウス氏の名前を知っている。その一方で、経済学研究者であれば、誰もが経済理論面での貢献でローマー氏の名前を知っている。
ローマー氏の貢献は、技術進歩が経済に正の影響を及ぼすマクロ経済モデルへの定式化である。組織の意思決定や市場の状況を考慮してどのように技術進歩が起こるかを、1990年の論文にて経済モデルに初めて取り入れた。
「長期的な経済成長」は、『国富論』を著した経済学の父、アダム・スミスの時代から主要なテーマである。この経済成長を分析するための基礎を与える貢献を行ったのはロバート・ソロー氏(1987年ノーベル経済学賞受賞)であった。ここまでの従来の経済成長論では、発展途上国は資本や労働力の投入により一定水準に落ち着くと考えられていた。
ロバート・ルーカス氏(1995年ノーベル経済学賞受賞)が人的資本の蓄積による生産性の向上に注目したのに対し、ローマー氏は、イノベーションが起き、それが持続的な成長を生み出し、知識やアイデアの蓄積度合いにより、国ごとの成長経路が異なることを証明した。
この論文をきっかけに、「内生的成長理論」という一大理論研究のトレンドを作った。政策面においても、どのような政策・規制がイノベーションを促すか、制約を与えるかについて、各国の成長戦略に大きな影響を及ぼした。また、世界銀行の開発援助政策へも、環境問題や教育が重視されるようになり、現実社会への重要な貢献をしている。
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