「損得の人」「好き嫌いの人」の意外に大きい差 「集中力のなさ」を矯正するより重要なこと

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こうしたマルチタスク型の子の場合に何か働きかけたい場合は、おすすめしたいのは、「スケジュールを作り、勉強のノウハウを教え、それをやることによってどれだけ“得”なのかについて話をすること」です。すると、本来のマルチぶりを発揮し、学校成績も満遍なく取れるようになっていくことがあります。

一点集中する「シングルタスク型」の子の場合

もう1つのタイプを「シングルタスク型」といいます。シングルタスク型は、一点集中型で、集中力は抜群にあります。しかし、対象以外の周囲はあまり見えません。

このタイプの行動基準、価値基準は「好き嫌い」です。好きか嫌いかを判断基準として行動します。ですから好きなことは徹底してやるが、そうでないことは後回しにするか、やりません。好きの領域に「知識」が入っていれば、どんな知識でも習得することが好きなため、学校内でトップレベルの成績になる子もいます。筆者が見るかぎり、難関校のトップレベルの層の子の多くはこのタイプです。

もし知識ではなく、別の領域が好きであれば、その好きな領域から入って心を満たしてからでないと、別の領域にはなかなか入っていきません。多くの子は、嫌いな領域に「勉強」が入っていると思いますので、無理やりやらせて、そこそこできるという程度で終わります。

そこで、シングルタスク型の子の場合は、「勉強の中でも、比較的やってもいいと思える科目や分野から始める」ということをします。好きなこと、やってもいいことをやることで、心が満たされると、好きではない領域のこともやってもいいという状態へと移行していく場合が少なくありません。損か得かという話をしても、このタイプには響きません。

当然のことながら人間誰しも、損得、好き嫌いの両方の価値基準を持っていますが、どちらが優位であるかということで考えてみると、何か糸口がつかめるはずです。

中村さんのお子さんは、おそらく「マルチタスク型」でしょう。気が散って仕方ないというのは、気配りできる「才能」であり、大人になった時にそれが長所であったと気づくと思いますが、小中高生の時は自分でコントロールすることが難しいため勉強するときは弊害になる場合があるのですね。

何を隠そう、筆者も典型的なマルチタスク型で、子ども時代は集中力がなくて、非常に困ったものでした。中村さんのお子さんと同じような子でした。そこでスケジュール管理をして、勉強方法を知ることで、なんとか集中力のなさをカバーしていました。それで根本的に集中力が上がったというわけではないのですが、少なくとも勉強はするようになりました。

マルチタスク型は秩序を好み、ラクできる方法、得する方法を教えてあげることで、スイッチが入ることがあります。ぜひ、そのようなアプローチで試されてみてはいかがでしょうか。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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