総務省が「5Gのアイデア」を一般公募するワケ 年20億円ある5G実証試験予算の枠組みを活用

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5Gの特徴(画像:総務省資料より)

なお、必ずしも事業としての実用化を想定としたビジネスモデルの提示は必要なく、「5Gがあればこんなことができるだろう」という、アイデアレベルでの応募も可能だという。そのためにはLTEまでとは異なる5Gの特徴を捉えたうえで応募内容をまとめる必要もあるが「“5Gをどう活用したいか?”という投げかけをすることで、地方自治体や各種法人、そして個人レベルも含め、5Gとはどんな特徴があるのかを知る切っ掛けにもなってほしい」(小林政務官)。

総務省によると、応募資格を特段に設けず、また実施能力も問わない形でのアイデア公募は前例がないという。

もちろん、個人レベル、あるいは法人でも技術力や実施力がなければアイデアは出せても実証実験はできない。

コンテストに賞金は設定されていないが…

実際のコンテスト運用に関しては、審査とともに実証試験をどのように行うかという座組についても話し合い、入選作(実証試験を行うアイデア)を選定後、協力企業を集めたうえで実施していく。コンテストに賞金は設定されていないが、実験に必要な予算はすべて総務省より支給される。

応募期間は10月9日~11月30日まで。総務省が各地方に持つ総合通信局でアイデアを取りまとめ、各地方ごとの選抜アイデアを抜き出したうえで2019年1~3月にコンテストを開催する。

10月2日午前、記者向けに説明を行う小林史明政務官(筆者撮影)

小林政務官は「これまでの携帯電話網は、B2C(Business to Consumer)で事業者が直接サービスを消費者に提供してきた。しかし、5Gでは携帯電話事業者が、何らかのサービス事業者、あるいは設備の保有者とともに新しい事業、サービスを創出し、コンシューマーや企業に価値を提供するB2B2X(Business to Business to X(Consumer or Business)の時代。間に入る事業のアイデアはバリエーションが広いほどよく、事業環境や立ち位置によって異なるニーズを幅広く集めたい」とその意図を強調した。

総務省としても、まだ手探りという印象が強い印象を受けたが、5Gにおいて社会および事業の環境が大きく変化するタイミングで、自身が変化しようという強い意思を示したものといえるかもしれない。

10月30日には5Gへの参入意思を示した事業者を対象に、公開ヒアリングが実施され、今後の周波数割り当てに向けた議論も加速してくるタイミングだ。果たしてどのようなアイデアが上がってくるのだろうか。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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