アメリカで物議「日本型経営」法案の衝撃内容 過剰な株主重視から対極な動きが出てきた

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経済学者たちは、ストックオプション、自己株買い、敵対的買収、独立社外取締役など、株主資本主義モデルの基本的特徴を分析してきている。だが、この研究によると株主資本主義導入により、アメリカ企業の業績が継続的に改善されているとは言えない。株主重視モデル支持派は、ストックオプションを活用することで役員報酬を株価と密接に連動させれば、役員たちはより忠実に株主の利益を代表するよう動くようになると信じていた。

日本企業にコーポレート・ガバナンス改革は必要か

しかしいざ実行してみると、ストックオプション制度は業績向上に対する役員への褒賞とはなっても、業績悪化に対する懲罰としての機能は果たしていない。ストックオプション制度は利益の還元先を、株主から経営陣幹部に移し、賃金格差をさらに拡大させている。

自己株購入プログラムは、生産性向上への投資や労働者の賃上げに回す資金を奪う性質のものだ。成長や雇用の安定、経済的平等を蝕む働きをする。M&Aもまた買収する側の企業にとっては特に、価値を生む可能性と破壊する可能性が半々だ。独立社外取締役の存在も、企業業績の改善に必ずしも貢献しているとはいえない。

これらのことから、私はかなり衝撃的な結論に至った。日本の政治家や企業幹部は、改革の実効性に対する明確な根拠を持たないまま、株主重視を志向したコーポレート・ガバナンス改革の施策を制定してきているのだ。

日本のコーポレート・ガバナンスに改革の必要がまったくない、というわけではない。多くの日本企業は、経営管理システムの透明度を高め、説明責任を強化し、多様性を推し進めることによって利益を得られるだろう。

端的に言えば、コーポレート・ガバナンス改革には、2つの顔がある。経営プロセスを改善し、長期的成長を促進すること、これが1つ。もう1つは、労働者を犠牲にして、株主の利益を増加させることだ。日本企業には前者の方が必要性が高く、後者の必要性は低い。アメリカで株主資本主義の長所と思われてきた部分を再検討しようとする思慮深い動きがあるとしたら、日本人も株主資本主義に対する健全な懐疑的姿勢を持ち続けるべきなのだ。

スティーブン・ヴォーゲル カリフォルニア大学バークレー校教授

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Steven K. Vogel

ボストン出身。プリンストン大学在学中インターンシップで当時の国務大臣、伊藤宗一郎氏の秘書を経験。大学卒業後、ジャパン・タイムズに勤務。その後、カリフォルニア大学バークレー校で修士、博士号を取得。カリフォルニア大学アーバイン校、ハーバード大学などで教えた後、現在は、カリフォルニア大学バークレー校政治学部教授。先進国、主に日本の政治経済が専門。著書に『Japan Remodeled : How Government and Industry Are Reforming Japanese Capitalism』など。

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