アメリカで物議「日本型経営」法案の衝撃内容 過剰な株主重視から対極な動きが出てきた

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サンダース、ブッカー両議員、オカシオ・コルテス氏はいずれも、ほとんどの先進諸国と同様に、アメリカが国民皆保険制度を導入すべきだと考えている。こうすれば、より安い費用で、質の高い医療を受けることができるようになる。これは、アメリカの全国民が望んでいることだろう。

しかし、ウォーレン議員はより有効なアプローチを提案している。彼女は、筆者が「マーケット・クラフト」と呼ぶ、後で富を再分配するのではなく、まずは富の分配を促すマーケット・ガバナンスの確立を目指している。ウォーレン議員の法案はむしろ、マーケット・クラフトが意図するより広範な戦略の一部として織り込むべきだろう。この戦略には、労働法規、独占禁止政策、知的所有権の改革が含まれており、経済の公平性を大きく促進する効果があると見込まれる。

マーケット・クラフトのメリットは?

ここではっきりさせておきたいのは、私が累進課税システムによる富の再分配と、社会保障費による全国民の生活向上を支持しているということだ。しかし、マーケット・クラフト戦略は、所得の再分配よりもさらに抜本的な方策である。なぜなら、格差にその根本から対処しようとするものだからだ。

現在の情勢では、こちらの方が、予算が少なくて済むという大きなメリットもある。それに、多くのアメリカ人の心に根差している、大きな政府や大規模な再分配の要求に対する不信感を刺激せずにすむのだ。これは、貧困層や少数派に有利になるように、経済システムをいじろうとするようなものではない。ただ単に、富裕層や権力者を優遇している部分を取り除こうというものだ。要するに、きちんとまとめあげれば、大半のアメリカ人から支持が得られるアジェンダなのである。

ウォーレン議員を批判する人々の中には、この法案が資本主義を根底から壊すものだと非難する向きもある。だが、それは違う。企業は有限責任など、法による恩恵を受けている。そうであれば、政府が企業に、その恩恵の対価として公的責任を求めるのは至極当然のことである。労働者の代表が取締役会に参加しても、企業が株主の利益を目指す妨げにはならない。むしろ、労働者の搾取ではなく、経営陣と労働者の協働を強化することにより、株主の利益をも最大化するウィン・ウィン戦略が推進される結果となるだろう。

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