ライオンズ優勝、鉄道収益にどの程度貢献? 日本シリーズ進出なら運賃収入上積み期待も

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今シーズンはすでに西武鉄道に約4億円の運賃収入が入ったと推定されるほか、クライマックスシリーズ進出・日本シリーズ進出でさらに3400万円弱もの収入上積みが期待できる。

また、ライオンズの入場料収入、グッズ販売収入、飲食販売収入も当然増加する。入場チケットを含む平均客単価を3000円としてざっくり計算しても、クライマックスシリーズと日本シリーズを合わせて4億5000万円の収入増となる。ライオンズがクライマックスシリーズ ・日本シリーズに進出することは、西武鉄道、西武ライオンズを含む西武グループ全体の収入を押し上げる効果を創出する。

一方、他球団の運営会社は非鉄道分野であることもあり、鉄道との連携に課題を抱えている事例も見受けられる。鉄道はプロ野球観戦輸送のうえでは基幹的交通機関としての役割を果たすことが期待されるが、球場が駅から離れていたり、鉄道の輸送力が脆弱であったりするなどの理由で、プロ野球観戦輸送において主導的な役割を果たせない路線もある。

現時点で建設着工の正式決定には至っていないが、日ハムの北広島新球場には千歳線の球場新駅の構想がある。しかし、北海道旅客鉄道(JR北海道)は慎重な姿勢を崩していない。この事例を見ても、プロ野球球団と鉄道事業者が別グループである場合、両者の調整は容易ではないこともある。

その点、西武鉄道は子会社として西武ライオンズを保有しているため、連携は容易だ。地下鉄副都心線・東京急行電鉄東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線および地下鉄有楽町線沿線と西武球場前駅の間の直通列車増発などの施策によって、都内や他地域からメットライフドームは遠いとのイメージを払拭することも重要となる。

西武鉄道がイニシアチブを取って、他の鉄道事業者との調整を進めたいところだ。

鉄道利用者増やすカギは?

また、現在は6~7割にとどまっているメットライフドームへの鉄道利用者の割合をさらに増やすカギは、自家用車よりも鉄道での来場のメリットを大きくすることにある。

混雑時の駐車場料金の値上げや、IC乗車券における西武球場前駅の出場履歴確認によるスタジアム飲食の割引サービス、IC乗車券による西武球場前駅利用回数に応じたポイントアップなど、現行の「電車で球場に行こう!」キャンペーンよりもさらに鉄道利用の特典を充実させて利用促進を図りたいところだ。

そして、球場への距離を感じさせない快適な列車や内外装をライオンズ一色に装飾した特急などの乗って楽しい列車、日本一を狙える強いチーム作りが、ライオンズと西武鉄道双方の持続的運営につながる。

一方、チーム成績はシーズンによって当然波動があるのも確かだ。メットライフドームに向かう列車においても、メットライフドームの中においても、ファンを楽しませる絶え間ない仕掛けづくりが、チーム成績に左右されにくい安定した入場者数の確保につながるはずだ。

埼玉県をフランチャイズとするプロ野球球団として地域密着のチーム作りとともに、ステークホルダーとのさらなる協働がライオンズと西武グループのさらなる盛り上げにつながるのである。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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