日本と北朝鮮「大学生14人」の交流に見た現実

平壌に約1週間滞在した堀潤氏がリポート

そして、いよいよ交流する大学生たちとの対面です。彼らとは約3日間、行動を共にすることになります。自己紹介の後、テーブルに向かい合って座りお互い思っていることを質問し合います。気温が上がり扇風機の風がそよぐ中、お互い言葉を選びながら質問を繰り出していました。

「どうして日本語を学ぶようになったのですか?」という質問。その最初の答えは、「日本は朝鮮を植民地にしてきた歴史があります。自分は日本語を習って賠償をもらいたい」というものでした。日本の学生たちは戸惑いを感じたようです。和やかなムードのなかでいきなりシビアな答えが返ってきたのです。

その後は、「日朝関係を新しくしたい。近い国だから中国と日本語学びたい、漢字があるので、まずは日本語を習ってから中国語を習えば身につけやすいと思ったからです」「日本は隣国ですから、経済的に協力するために日本語を学んでいます」と続きました。

日本の学生たちはそうした答えを受け、こう返します。 「僕たちは若い、大人になったときに朝鮮に行ったと言える。君たちも日本人に会ったと言える。人と人との関係が、大きな国などの関係につながっていく。人と人との関係から始めたい」。

「人と人との関係から始めたい」(写真:日本国際ボランティアセンター(JVC))

平壌の学生が確認します。「人と人との関係から、国と国との関係につながるということですね」、そう語りながら笑顔で頷いていました。

大人同士の交流の中で見えてきた、北朝鮮の目指す未来

:最初の交流の後、日朝双方の学生たちが同じバスに乗って平壌市内の施設をまわりました。 訪れたのは幼稚園や小学校の教師を育てる、教員大学校です。そこでは、驚くべき授業の数々が展開されていました。ARやVRなど最新のデジタル技術を使った遠隔授業の技術の育成です。発展を続ける平壌と貧困が続く農村部との教育格差を埋めるため、これからは遠隔授業で平準化を狙うのだというのです。子どもたちが視覚・感覚でとらえられるようにプロジェクションマッピングの技術を勉強していたり、予想以上に技術が進んでいました。3Dホログラムなども使用するというのです。

「平壌はショーケースだ、プロバガンダだといわれるけれど、農村部と都市部の違いも認識していて、課題だと思っている。平壌でモデルケースを作り、それを徐々にそのほかの地域に浸透させていくのがわれわれの国のやり方だ」と話していました。最新の教育技術に関しては、平壌外国語大学の学生たちでさえ驚いていました。急速な発展を遂げようとしている、その一端を感じさせる授業でした。 こうした記録映像はなかなか日本国内の報道では目にすることができません。私たちが見ている北朝鮮はごくごく一部なんだということを改めて認識させられました。日本で東京が最先端なように、朝鮮では平壌が最先端。日本も地方創生が課題であるように、農村との格差が課題。「平壌だけでしょ」と言われるけれど、日本も「東京だけでしょ」と言われるのと同じことなのかもしれません。

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