打倒アマゾンの新勢力、ファンシーに熱視線 セレブ御用達のソーシャルコマースが日本にも上陸

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値引きとは無縁。重視しているのはセンス、偶然の出会い。検索を中心に据えたアマゾン的なるものへのアンチテーゼといえる戦略に共鳴した著名経営者は、ファンシーの未来に大きな可能性を信じているようだ。楽天社長の三木谷浩史もその一人。ファンシーの評判を聞きつけて楽天グループ入りを働きかけたが、交渉は決裂。アインホーンは当面、自力で世界展開を加速させていく考えだ。

ジョゼフ・アインホーンは16歳で実業界入りし学歴は高卒止まり。しかし彼の周りにはハーバード卒のエリートが集う。フェイスブック共同創業者のクリス・ヒューズだけでなく、日本事業の責任者である矢田公作(2007年卒)、ゼネラルマネジャーの吉永力(09年卒)もハーバード出身。彼らは日本の事業を分担しているだけでなく、本社の幹部と経営方針全般を議論するポジションだ。

パートナーは伊勢丹

日本拠点はすでに本格始動している。10月に実施した60億円の増資では日本のインスパイア、ヒトメディアも参加。矢田は「米国外のユーザーへのサービスを充実させるため、日本を含めたアジアでの倉庫インフラも検討中」と言う。また同じ10月には、日本企業との事業提携も決めた。第1号は伊勢丹。ファンシーのサイト内に伊勢丹のオフィシャルページを開設したのだ。最初に販売するのはリビング雑貨を中心に約30点。三越伊勢丹ホールディングスの北川竜也ウェブメディア担当マネージャーは「日本発のデザインを世界へ発信する」と意気込む。

アインホーンは「ウィル・スミスやカニエ・ウェストのようなセレブの方々を起点に利用者は広がっていった。日本でも有名人の方々に使ってもらえるようにしたい」という販促シナリオを描く。日本でもソーシャルコマースが本格化しつつある。

=敬称略=

週刊東洋経済2013年11月16日号(11日発売「ニュース最前線」記事に加筆)

Ayako Jacobsson ジャーナリスト

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アヤコ・ジェイコブソン / Ayako Jacobsson

山口県徳山市生まれ、広島市で育つ。東京都立大学(現首都大学東京)法学部卒業、英ケンブリッジ大学、コロラド大学ボルダー校で学ぶ。在学中、AP通信東京支局で編集アシスタント、卒業後はビジネステレビのディレクターとして「ウォール・ストリート・ジャーナルを読む」「製造物責任法」等を担当。その後、読売新聞英字新聞記者として、通信、テレビ、映画、ホテルなどの業界を取材した。ペルーのフジモリ元大統領へのインタビューも行った。1999年頃からシリコンバレーに拠点を置き、取材・執筆活動を行っている。

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山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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