保険の最新商品を徹底分析、いいとこどり商品も登場
三輪鉄郎
ステレオタイプの書き出しになってしまうが、やはり昨今の保険商品の動向を語るうえで、「保険金不払い問題」は避けて通れない。
この問題で金融庁から業務改善命令を受けた生命保険10社は、8月1日、金融庁に向けて再発防止策などを盛り込んだ業務改善計画を提出した。各社とも、経営管理(ガバナンス)態勢や内部監査態勢などの改善・強化、保険金などの支払い漏れ等にかかる再発防止策等の必要な見直し・改善などを柱とする業務改善策を盛り込んでいる。
保険商品そのものに対する取り組みとしては、不払の温床となった複雑な医療保障特約の改善策として、「商品ラインナップの簡素化」と「わかりやすい商品への改良」が掲げられている。
このうち簡素化については、日本生命がこれまで6種類あった医療特約を10月から一本化することが代表例だ。また、約款で定めた手術に限ってきた手術給付金の対象を、公的医療保険が適用される全手術にまで広げることは、支払い事由をわかりやすくした例といえるだろう。
不払い件数の多かった通院特約の販売を停止するなどの措置をとったのが第一生命だ。不払いの多かった通院特約は、昨年の4月に販売を停していたが、さらに今年に入ってからは特約部分だけでなく主契約も販売停止にするなどの踏み込みをみせた。10月からは、性別・年代および付加する特約ごとによって異なっていた主力商品の販売名称を統合。具体的にはこれまで販売していた13商品の販売名称を「堂堂人生」「順風人生」「主役人生」の3種類に統合し、主力商品を「人生シリーズ3本立て」へと変更。わかりやすい商品ラインナップの実現を図った。こうした商品性に問題があったものや類似した複数の特約の統廃合で、すっきりとした商品体系の確立を目指す動きが全般に目立つ。
また、明治安田生命も、手術給付金の対象を公的医療保険制度対象の手術まで拡大し、介護保障の支払い事由についても公的介護保険制度の要介護状態と連動させている。契約者が理解しやすい公的制度を基準としたものに改良するなど、わかりやすさの向上策が図られている。
保険金不払い問題をめぐっては、多数の特約を提供することで商品内容が複雑になったこと。そのため契約者自身が契約内容を十分に理解できなくなっていることが、大きな要因の一つとしてかねてから指摘されていた。
今回の一連の動きは、消費者の不信を払拭するために、生保各社従来の「満艦飾」型の保険商品販売に決別し、シンプルでわかりやすい保障機能を提供するという経営、営業方針へ大きく舵を切ったことを物語っている。各社が競争を勝ち抜くうえで本当に必要で役に立つ特約の開発や既存特約の商品性改善などの企業努力が、一層重要になっていくだろう。
トレンドを具現化した医療保険が続々登場
生命保険各社の医療保障特約の簡素化の流れと同様の動きは、医療保険の分野でも顕著だ。
損保ジャパンひまわり生命が、8月2日から取り扱いを開始した「健康のお守り」がその典型的な商品だ。同社は既存の医保険と新終身医療保険(ワハハ21)を統合して、商品数を従来の二つから一つに減らした。また、特約のうちニーズが低いものや類似のものを統廃合したほか、通院特約など不払いが多く発生したものを廃止して、特約数を31から8に減らしている。まさに、現在の保険業界のトレンドを具現化した新商品といえる。
「健康のお守り」は、従来の「手術見舞金特約」を基本保障(主契約)にあらかじめ組み込んだ。所定の手術に該当しない場合でも、入院が伴う健康保険診療の手術には手術見舞金が給付されるなど、保障の充実が図られている。
整理・削された特約について見てみると、まず目を引くのが「先進医療特約」だ。
厚労省が規定する先進医療による治療を受けた場合に、技術料(実損_補)が通算1000万円まで保障され、月払いの場合で、一律プラス70円で付加できる。先進医療については、公的医療保険の適用外であることから、個人の医療費負担が高額になる場合がある。そのため、日数が短くなる傾向がみられる入院に対する保障よりも、むしろ先進医療の負担こそ保険で備えたいというニーズがある。それに低廉な価格で応えている格好だ。また、入院が長期化するケースの多い脳血管疾などにも備えたいという人には、七大生活習慣病の特則で保障期間の延長が可能となっている。
最後に、保険料についても確認しておこう。終身医療保険では、保険料負担が長い期間にわたるだけに、重要なポイントだ。今回は、保障内容等をなるべく近くに設定して、低廉な保険料で人気の高い既存商品と比較してみた。具体的にはアフラック、オリックス、アクサの各商品となる。内容が完全に同じではないので、あくまで一つの目安だが、保険料からみても十分に競争力があるといえそうだ。
以上みてきたように、この商品ではシプルな主契約で、低廉な保険料を実現。特約も、31から8に数は減っているが、契約者がニーズに応じて組み合わせることで、希望する医療保障を用意するのに必要かつ十分な内容だ。既存商品の「いいとこ取り」ともいえる商品性を備えている。