八方ふさがり「由利高原鉄道」資金集め大作戦

寄付金殺到の立役者は「こけし駅長」だった

矢島駅の改札前に設けられた「こけし駅長室」。各駅長室の下に寄付者の名前が書かれており(右下)、持参した「こけし駅長」を納める(筆者撮影)

クラウドファンディングでは応募に対するお礼として「返礼品」が送られるが、その主となる「こけし駅長室」はなかなかユニークだ。1万円以上の寄付者には「一口駅長」のミニ本荘こけしが返礼品として送られる。受け取った寄付者は、そのこけしを持って矢島駅に行き、寄付者の名前が書かれた「駅長室」に納めるのだ。筆者も、届いたこけし駅長を持って7月に矢島駅まで出向いた。もちろん、由利高原鉄道に乗って。

こうして鮎川駅前にできた「おもちゃまちあいしつ・こどもハウス」は、お洒落でウッディな仕上がりとなった。待合室には小学校のいすが置かれ、室内では木製のおもちゃで子どもたちが自由に遊ぶことができる。バス停の標識も子ども向けのかわいらしいものが立てられた。さらに、ホーム上には「世界一小さな待合室」だという「あゆかわこどもハウス」がつくられた。

これなら、鮎川駅での22分の待ち時間もあっという間に過ぎてしまうだろう。実際、私と一緒に下車した家族連れは、手持ち無沙汰な様子もなくシャトルバスの発車時間を待っていた。

車両改造費は「匿名の篤志家」が

「まごころ列車」として運転中のYR2001号車「鳥海おもちゃ列車『なかよしこよし』」。秋田杉をふんだんに使った車内は楽しい雰囲気だ(筆者撮影)

その鮎川駅までの道のりも楽しめるよう工夫された。前述の「まごころ列車」には、待合室と同様、砂田光紀さんのデザインによる「鳥海おもちゃ列車『なかよしこよし』」を使用しているのだ。車両は既存のYR2000形YR2001号車の改造で、車内は秋田杉の無垢材をふんだんに使い、木のおもちゃが置いてあるなど、ここでも「木育」を感じさせる。

ただ、この改造費がどこから捻出されたか気にかかる。この点についての春田社長の回答は明快だった。「匿名の方が改造費1500万円を出して下さいました。由利本荘市に寄付され、市がどなたか一切言わないため、私も寄贈者を知りません」

こうして「鳥海おもちゃ列車『なかよしこよし』」に乗って「おもちゃまちあいしつ・こどもハウス」のある鮎川駅に行き、シャトルバスで「鳥海山 木のおもちゃ美術館」に向かうという行程が見事にできあがったが、由利高原鉄道はこれらを、匿名の篤志家による寄贈とクラウドファンディングによる全国からの寄贈、さらにシャトルバスは美術館の負担と、自己負担なしに成し遂げた。

もちろん、これは同鉄道が由利本荘市とともに仕掛けた結果であり、かつクラウドファンディングの企画や返礼品の手配から発送まで手間をかけて対応している。よく「知恵ある者は知恵を出せ、知恵なきものは汗を出せ」と言われるが、「知恵」を「お金」に変えると由利高原鉄道にあてはまりそうだ。

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