八方ふさがり「由利高原鉄道」資金集め大作戦

寄付金殺到の立役者は「こけし駅長」だった

「鳥海山 木のおもちゃ美術館」のオープンで、週末を中心に由利高原鉄道の乗客は増えているという。とはいえ、由利本荘―鮎川間は片道330円で、増収額は決して多くない。通学利用者の減少が大きいため、その収入減をカバーする程度ではないかと春田社長は推測している。

しかし、由利高原鉄道としてはやはり増収を目指したい。そのために、地元だけではなく、全国に支援してくれる人たちの輪を設けているという。いまのところ、関東・中部・関西・九州に支部的な存在があり、それぞれにまとめ役がいて親睦を深めているそうだ。これら各地の応援者や地元の応援者が、折に触れて貸切列車を仕立ててくれるといい、筆者が訪れた日も、このメンバーによる貸切のビール列車が走っていた。

貸切車両は基本的に、乾電池「エボルタ」ラッピングのYR2002号車が使われる。この日は「まごころ列車」で園児の団体が乗車し、午後にはサポーターによるビール列車にも使われていた(筆者撮影)

車両の貸切料金は片道2万円、往復3万円と手軽な金額で、20~40名の宴会列車とした場合、飲食も含めて1人あたり3900円から対応できるという。

飲食を伴う列車では、原則としてロングシートの前にテーブルを設置できるYR2002号車を使用。車内装飾は「まごころ列車」のアテンダントが率先して対応しているそうだ。気軽に楽しめれば何度も足を運ぶことになり、増収効果は大きい。今後もサポーターを大切にすることが重要になってきそうだ。

もちろん、由利高原鉄道でも独自に夏場の納涼ビール列車や秋のB級グルメ列車、忘年会列車などを次々と企画しており、増収策には余念がない。

車利用者をいかに取り込むか

筆者が気になったのは、「おもちゃ列車」で鮎川駅に来た家族連れは、家族全員が列車で来ていること。そして、目的地の「鳥海山 木のおもちゃ美術館」に行った後、そのまま羽後本荘駅に戻る様子だったことだ。

これはもう一工夫できそうだ。たとえば、オーストラリアのメルボルン郊外を走る「パッフィングビリー」という、蒸気機関車を運転している保存鉄道では、車でやってきた家族連れは子どもだけを列車に乗せ、親は車で列車を追いかけていた。目的は、蒸機列車に乗るわが子を踏切などで撮影することだ。

「鳥海山 木のおもちゃ美術館」に行く子どもの場合は、1人で「まごころ列車」に乗せるよりも、親も一緒に乗っていく方が子どもも楽しめそうだ。そこで、たとえば両親や祖父母との家族連れでやってくるなら、あえて乗車距離の長い矢島駅から鮎川駅まで列車を利用し、家族のうち1人が車を回送して途中で乗車している様子を撮影して鮎川駅で出迎える……といった利用方法も勧められるのではないだろうか。

車社会だからこそ、車でやってくる家族連れに、片道だけでも列車を利用する理由付けとして「おもちゃ列車」は適しているように思った。子どもを対象にした美術館という新たな施設のオープンを、誘客に結びつけるべく工夫を重ねる由利高原鉄道の今後の動きに期待したい。

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