「ICOCAポイント」導入に隠されたJR西の狙い 格安の「昼特きっぷ」販売終了したかった?

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大阪―京都間、大阪―三ノ宮間などで利用できる昼特きっぷの割引率は最大で4割近い。普通回数券と組み合わせて移動するのもJR西日本ユーザーなら定番だった(筆者撮影)

また、兵庫県の明石や姫路、滋賀県から大阪市内へ向かう利用者も昼特きっぷを重宝する。JRの運賃体系は、基本的に遠くへ行けば行くほど1kmあたりの運賃は下がっていくが、近距離の一部区間では、乗車駅から下車駅まで通しで切符を購入するより、途中駅で分割したほうが安くなるケースが出てくる。

たとえば、山科―京都―大阪間の運賃は840円だが、京都駅で途中下車すれば730円、昼特きっぷと回数券の計2枚を組み合わせれば523円で済む。JRが大阪―京都間のみ極端に割り引いた設定にしているので、このような現象が起きる。

JR西日本の東海道・山陽本線の駅前を探すと、格安回数券用の自販機をよく見かける。特に滋賀県が多く、全国の台数の3割を占めているとの調査もあった(筆者撮影)

この運賃差に着目したのが金券ショップだ。昼特きっぷと回数券を大量購入し、JRの駅前で1枚単位からバラ売りをしている。通常の回数券は11枚単位でしか販売しておらず、1人で全部使い切るのは難しい。だから、金券ショップで次の予定のため必要な枚数だけ用意しておく。それが東海道・山陽本線を移動する人たちの隠れた節約術だった。

この9月、大阪梅田の地下街に集積している金券ショップを訪ね歩いてみた。大阪―京都間の昼特きっぷ1枚の相場は360~390円だった。一方、京都市にあるA店は400円、滋賀県にあるB店は450円、C店は460円……と、店舗の立地、競合の有無によって価格差が生じているのは興味深い。

昼の利用者開拓には貢献したが・・・

JR西日本としては、昼特きっぷの普及と人気で、乗車率の低かった平日昼間や土日の利用者を掘り起こすことができたのは確かだ。複数の回数券を使う人たち向けに3枚投入可能な自動改札機も整備した。

その反面で、金券ショップ経由で購入した人たちと、券売機やICOCAを利用して本来の運賃で乗車している人たちとの間に不公平感が生じているのもまた事実である。各駅における毎日の売上にも少なからぬ影響がある。その軌道修正を図るべく、ポイント制度を導入する形だ。

今回、JR西日本が発表した「ICOCAポイント」は、自動改札機を出入場した時の利用状況を1カ月間(1日から末日まで)単位で集計し、その利用区間や回数、時間帯、条件などにあわせて、ポイントを付与するサービスとなる。

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