一眼レフ減速は一時的、新興国に拡大余地 ニコンの木村真琴社長に聞く
[東京 12日 ロイター] - ニコン<7731.T>の木村真琴社長は12日、一眼レフなどレンズ交換式デジタルカメラの販売が初めて前年割れになることについて「海外の景況の影響で一時的に踊り場に入っているが、中期的にはまだまだ新興国で成長の余地がある」と述べ、来期以降の成長も期待できるとの見方を示した。
過去10年以上にわたってレンズ交換式カメラは、年率10%を超える成長を続けてきた。ただ、ニコンの今期の販売計画は、同社がデジタル一眼レフを発売した1999年から初めて前年を割り込む。キヤノン <7751.T>も2003年のデジタル一眼レフの発売以来、今期の販売が初めて前年を下回る。
スマートフォンの影響でコンパクトカメラの市場は縮小する中で、一眼レフの成長にも限界に来ているとの見方があるが、木村社長はこれを明確に否定した。一方で「伸び率は鈍化するだろう」とも述べ、今後は年率1ケタ台の成長を目指していくとの見方も示した。
インタビューの詳細は以下の通り。
―― デジタル一眼レフを発売して以来、今期初めて減少に転じるがどう受け止めているか。
「今は残念ながら、景況の影響を受けているが、中期的にはまだ伸ばせる。なぜなら一眼レフの新興国の普及率はまだまだ低い。ブラジルではカメラ全体で800万台の規模があるが、一眼レフは数万台にとどまる。中国でもまだまだで、インドもコンパクトは普及しているが一眼レフは数万台レベル。写真で最高のものを撮るなら一眼レフなので、こうした地域ではまだまだ伸ばせる」
―― デジタル一眼レフカメラの販売は再び過去のような成長軌道に戻せるか。
「これからの10年は従来のような一直線の伸びではなく、鈍化するだろう。今年5月の中期経営計画では、2013―2015年度の3年間で25%の伸びを見込んでいたが、これからは毎年1ケタ台の数字をねらっていくことになる」
―― 映像(デジカメ)事業の売上高は2016年3月期に9000億円が目標だが、達成は厳しそうだ。
「今期の売上高予想を7100億円に下方修正したので、その計画は見直す。うまく回れば一眼レフの高い成長もあり得るが、今の流れではコンパクトはまだ数年間は縮小していく可能性がある。映像事業全体の売上規模を維持できるのか、伸ばしていくのか、もう少し見極めていく」
―― デジカメ事業の戦略をどう見直すか。
「今までは画素数やズームで技術革新を争って、マーケットを拡大してきたのがデジカメだった。だが、技術革新のペースは落ちているし、コスト構造とともに商品開発の考えを見直さなければならない。カメラの定義を変えていく」
「スマホの普及で写真を撮る人が数十億人になったのは、歴史上初めて。写真に身近になった人々が次のステップでどんなカメラを欲しがるか。われわれが回答を出していく」
――富士フイルム <4901.T>、パナソニック <6752.T>、オリンパス <7733.T>のデジカメ事業が赤字に陥っている。ニコンは黒字を継続しているが違いはあるか。
「われわれは昔からカメラメーカーのブランドでやっている。他社のカメラ事業は小さいところが多く、カメラに対してどこまで資源投入して経営を継続していくか考え方が違う。ひとことで言えば、カメラへの思い入れがまったく違うと思う」
――デジカメ業界の再編は起こるか。デジカメ2強の一角としてどう生き残るか。
「将来的には色々な可能性はあると思うが、現段階で具体的に何かを考えていることはないと思う。これからも、海外で韓国サムスン電子<005930.KS>が出てきたし、ソニー <6758.T>という力のあるメーカーもいるので、こうしたところと戦っていく」
(村井令二 ソフィー・ナイト 編集:田巻一彦)
*本文中の重複箇所を修正しました。
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