タカラトミーがデジカメ市場に参戦? プリンタ一体型の“インスタント”デジカメ発売へ
玩具大手のタカラトミーは11月28日、撮ったその場で画像をプリントできる、新しいタイプのプリンタ一体型のデジタルカメラ「Xiao(シャオ) TIP−521」を発売する。デジタルカメラの機能を生かしつつ、写真を撮るだけではなく、それを印刷して、その場にいる人と一緒に「楽しむ」という新しい使い方を提案する。デジカメ自体の市場は激戦状態だが、カメラメーカーにない視点に立った新しいタイプの製品が消費者に受け入れられるか、注目されるところだ。
シャオは、「玩具会社が作ったカメラらしく、どう楽しむか、徹底的にエンターテインメントの視点に立った」(富山幹太郎社長)カメラだ。そのため、仕掛けや操作の簡単さに重点を置き、高画質・画素数など、スペック競争にしのぎを削る既存のデジカメとは一線を画する。最大の特徴は、撮った画像をその場で印刷できる、ということ。「写真は、撮るときより見るときの方が楽しい」とのコンセプトのもと、撮ってすぐプリントすることで、コミュニケーションの幅が広がるはず、というのがタカラトミー開発陣の「仮説」だ。
タカラトミーがカメラ市場に進出するのは、これが初めてではない。前身のトミー時代の1998年、日本ポラロイドと世界最小のポラロイドカメラ(「xiao」)を共同開発し、国内では女子高生を中心に350万台、海外含めると1000万台もの数を売り上げた実績がある。また、2000年には「ミーシャ」というトイデジカメも出している(販売数は10万台)。今回は、そうした実績や経験を踏まえての再挑戦ということになる。
シャオで撮影した画像は、名刺サイズ(5×7.5センチメートル)の別売りの専用フォトペーパーで印刷できる。この紙は裏面をシール加工してあり、剥離紙をはがせばシールとしても楽しめる。1枚の画像として印刷するほか、複数の画像を一枚の紙に分割印刷することも可能。プリクラ感覚で、テンプレートを使って画像に絵や文字を入れるといった加工や、他のカメラや携帯電話で撮影した画像を赤外線送信してプリントすることもできる。メインユーザーとしては、20代から30代のかつての「プリクラ世代」を意識している。
シャオに採用された印刷技術や専用紙は、米国のZINKイメージング社(マサチューセッツ州、2005年設立)が開発したもの。技術の要は「ZINKペーパー」と呼ばれる特殊な紙で、普通の白い写真用紙のように見えるが、そこに専用デバイスで熱を加えることで、紙に含まれる染料水晶(ZINK社が特許を保有)が活性化して発色するという仕組み。ZINK社の技術は、米国ではポラロイド社等でも採用実績があるというが、日本では実用化第一号となる。もともと2006年ごろ、タカラトミーの商品開発に、ZINK社が技術を活用できないか、と持ち掛けたことから始まったプロジェクトで、以後足かけ3年で、ようやく商品化にこぎつけた。ZINK社としても、シャオを足掛かりに、パートナー企業を広げたい考えだ。
タカラトミーは、シャオの開発段階から海外展開も念頭に入れており、米国や欧州では来年4~5月に発売の予定だ。「玩具メーカーとして、創造性や新販路の開拓については実績があるが、耐久消費財を海外で販売したことがない。いろいろと考えたが、強大な競合相手を敵に回すのではなく、その力を借りる戦略を考えている」(高橋勇・取締役専務執行役員海外事業統括本部長)という。具体的な提携相手として、国内外の複数社と現在交渉の最中だというが、販売面やマーケティングの手法、品質保証、知的財産権の管理などの面で協力できる相手と組む予定。「来年1月8日から開催される米国のコンシューマ・エレクトロニック・ショーまでには公式発表したい」(高橋氏)としている。
シャオの小売価格は、税込み3万4800円で、専用フォトペーパー(20枚入り)は880円という価格設定。販売ルートとしては、カメラ量販店、雑貨販売店、ネット通販などを想定している。初年度出荷台数の目標は10万台。玩具メーカーのカメラとしては「やや高額」(富山社長)であることを認めているが、タカラトミーは、後続機種として、低年齢層を狙ったより安価の製品の投入も検討している。
(勝木奈美子 =東洋経済オンライン)
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