人気爆発でも「チューハイ」が儲からない理由 「新ジャンル」からの流入が加速しているが…

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物流にも課題を抱える。ビール類の場合、輸送効率を考慮し大手メーカーは全国に満遍なく工場を配置している。一方、メーカーにもよるが、チューハイの製造体制はビール類ほど整ってはいない。そのため、輸送距離やトラック台数が増え、物流費がかさんでしまう。

サントリースピリッツの佐藤氏は「売り場に自社製品が多く並び、消費者との接点が増えるという意味でシェアは重要」と強調する。それだけに、「規模のメリットが働くサントリーの安値での攻勢が今後も続きそうだ」(藤原アナリスト)。

キリンは採算改善急ぐ

そうした状況の中、シェア2位のキリンは採算改善の取り組みを始めた。今年4月には無果汁のチューハイを発売するなど、「今後は果汁を使っていないチューハイを強化する」(社内関係者)。

製造体制の増強にも動く。同社は全国にビール工場が9カ所ある一方で、チューハイが製造できるのは5カ所のみだった。19年5月には50億円を投じ、名古屋工場内にチューハイの製造設備を増設する。手薄の中部地方にも拠点を置き、物流費の削減を狙う。

ただ、「トップシェア以外の立場では、リベートを減らすなどで店頭価格を改善していくような価格主導権はない」(藤原アナリスト)。キリンホールディングスの磯崎功典社長も、8月に行った中間決算会見の席上で「プレーヤーが多く競争も激しいので、(収益面での)改善については中長期的に努力していきたい」と述べるにとどまる。

一見すれば市場拡大で救世主に映るチューハイ。だが、メーカーも“手軽に酔える”ほど市場は甘くない。儲かる体制を整えていくことが急務になっている。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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