「中国人優遇」の偽ニュースはなぜ生まれたか

関空の中国人避難問題、一連の事実を検証

この調整を受け、中国領事館は関空の対岸にある泉佐野市内のショッピングモールに空港から避難した中国人旅行者を迎えるバスを派遣した。関西エアポートも旅行者を空港から避難させる際は中国人だけを別に振り分けて、領事館が手配したバスが待つショッピングモールにバスで輸送することにした。

5日、中国人旅行者を含めて取り残されたすべての旅行者の避難が開始された。この時に、一部の旅行者の間で誤解が生じ始めた。中国人旅行者を振り分けるために、中国人はパスポートの確認を受けてからバスに搭乗。この対応を受けて、中国人旅行者や周囲の旅行者のなかには「中国人だから優遇を受けている」「領事館が尽力したから優先的に避難できる」といった誤解が生じ、SNS上で流布され始めたのだ。

また、関空から避難する際に搭乗したバスがほかの旅行者が搭乗したバスと行き先が異なることや(ほかの旅行者は南海電鉄の泉佐野駅に送られた)、事前にSNSなどを通じ中国領事館の努力を知っていたことから、「中国人が乗ったバスは領事館が手配したもの」という誤解も発生した。

しかし実際に関空からショッピングモールまで中国人を乗せたバスは、関西エアポートが手配したバスだった。関西エアポートは「避難に用いられたバスは自社が手配したもので、バスの手配も関空による決定。中国領事館が手配したバスは乗り入れていない」と話す。19日に中国領事館に表彰された南海バスの広報担当者も、「要請は関西エアポートからのもので、中国領事館からではない」と認める。

動画が誤解を「補強」

なぜどちらが手配したバスか、詳細に書いたのには理由がある。今回、空港から中国人旅行者だけが優先的に避難できたかのような複数の動画がSNS上に出回ったからだ。

動画は避難が開始された早い段階でバスに搭乗できた中国人旅行者が撮影したようだ。中には、中国領事館の職員とされる人物がバス車内で避難活動に参画している映像もあった。

しかし、繰り返しになるが、空港からのバスは関空が手配したもの。空港へのアクセスが規制される中で、中国が手配したバスだけが特別に通行を許可されたわけではなかった。

また動画が撮影された時点で、すでに中国人旅行客以外の旅行客も別のバスで避難を開始していたと見られる。実際、関西エアポートの広報担当者は「中国人旅行者が優先的に早く出た事実はない」とする。同社は「すべての旅行者の輸送は5日の23時をもって完了した」とのリリースを出しているが、広報は「中国人以外の旅行者の避難が完全に終了したのは5日の23時30分で、中国人旅行者は6日の0時近くだった」と話す。

一部の旅行者に生じた誤解が動画によってさらに誤解が強調され、台湾メディアもそれを見て事実確認を行わず報道、広く流布されたと考えられる。

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