「中国人優遇」の偽ニュースはなぜ生まれたか

関空の中国人避難問題、一連の事実を検証

以上、結論を言えば、中国領事館が同胞である中国人旅行者を救出するために尽力したのは事実だ。他方で、中国領事館が手配したバスは関空まで乗り入れておらず、中国人旅行者が優先的に避難した事実もない。結局、台湾メディアは事実を確認せずに、中国人旅行者が「優先的に避難した」と伝えてしまった。

ファクトチェック組織も「誤り」と指摘

これらの誤解に基づくネット上の偽情報は関西エアポートなどの当事者に問い合わせ、事実確認を行えばフェイクニュースとして流れなかったはずである。しかし、多くの台湾メディアはそれを怠ってしまった可能性がある。台湾大手新聞社の記者は「人員も十分でなく、スピードで他社と競争する以上、ネット情報を事実確認せず流すしかない時は多々ある」と事実確認の取材が甘い現状を語る。

9月15日には誤った情報が広がるのを防ぐためにファクトチェックを行う「台湾ファクトチェックセンター」が、「中国領事館が関西空港にバスを派遣し、優先的に中国人旅客を救った」ことは「誤り」だと指摘した(https://tfc-taiwan.org.tw/articles/150)。

台湾ファクトチェックセンターには日本でファクトチェックの普及を目指すファクトチェックイニシアティブジャパン(FIJ)も協力。FIJで理事長を務める早稲田大学政治経済学術院の瀬川至朗教授は「旅行者の誤解や思い込みが積み重なって、ネット上で広がった真偽不明の情報をしっかり事実確認せずに報道してしまった台湾の報道機関の責任は重い」と話す。

関西エアポートへの取材や台湾ファクトチェックセンターの発表を基に、19日に配信した筆者の記事では一連の情報を「フェイクニュース」と断言した。ただ、中国領事館が中国人の救出に尽力したことは事実であり、その点で表現に曖昧さが出てしまったことも否めない。

今回はメディアがいかにネット上の真偽不明の情報に向き合うか、改めて問われる一件だった。

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