石破氏「斬り込み不足」、首相は「上から目線」 公開討論の後も、小泉進次郎氏はだんまり

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記者クラブ代表による質疑では、「ニュース性重視」の狙いから、それまでの「対論」と違って首相との質疑が多くなったが、最終盤に総裁選での論戦の少なさがテーマとなると、石破氏は「災害もあった。だけども総理大臣選びなんだから(候補者同士の議論を)できるだけやって、国民に見てもらうのが自民党の責務だ」とし、災害対応や首相外遊による論戦短縮について「だったら(総裁選の期間を)変えればいい」と党執行部の対応を批判した。

しかし首相は「石破さんが延期しろと言ったが、23日から国連総会に行き、日米首脳会談もある。それを放っておいて党内の党首選びを優先しろというのは…」と気色ばんで反論した。ただ、このやり取りの部分は生中継での時間切れとなり、言いっ放しの“尻切れトンボ”に終わった。

討論会の事前打ち合わせの際に、控室で両氏は現在の心境を色紙に揮毫した。首相は「平成のその先へ」、石破氏は「着々寸進、洋々万里」で、達筆の首相に対し、石破氏は「もっとお習字をやればよかった」と頭を掻くなど緊迫感はなく、首相が過去の総裁選の思い出を語って石破氏もうなづくなど、和気藹々の雰囲気だったとされる。

ニュースは「日銀」と「プーチン」

14日午後には党本部での討論会が行われ、午前に続き憲法9条改正が議論となり、首相が改めて「自衛隊を書き込むことで違憲論争に終止符を打つ」と早期実現への意欲と決意をアピールすると、石破氏は「スケジュールありきでやるべきではない」と異議を唱えた。これに対し首相は、党内の討論会だけに「『なぜ今急ぐのか』という議論は、基本的に『やるな』と同じだ」と石破氏の発言を強く批判した。

記者クラブ討論会のやり取りは15日付けの新聞各紙朝刊で大きく報じられたが、首相支持とされる読売、産経両紙はそれぞれ解説面に「首相、成果を強調―石破氏攻めきれず」「実績の首相、理想論の石破氏いなす」との見出しで論戦での首相優位を浮き立たせた。一方、"反安倍"と見られている朝日新聞は「首相、防戦のち反論―経済・改憲すれ違い」と中立的見出しでお茶を濁した。

一方、討論会でのアベノミクス論議の中で、現在の異次元の金融緩和を正常化する「出口政策」を問われた首相が「(異次元緩和を)ずっとやっていいとはまったく思っていない。私の任期のうちにやり遂げたい」と語ったことが大きな経済ニュースとして報道された。

また、総裁選中の訪ロの際、プーチン・ロシア大統領が「前提条件なしで日本との平和条約を年内に締結しよう」と提起したことについて、首相が「平和条約が必要だという意欲を示されたのは間違いない。今年11、12月の首脳会談は重要になる」と語ったことも外交ニュースとして世界に発信されるなど、報道面では「首相が石破氏を圧倒」(細田派幹部)する格好となった。

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