石破氏「斬り込み不足」、首相は「上から目線」 公開討論の後も、小泉進次郎氏はだんまり

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これを受けての「対論」では、まず首相が地方創生を取り上げ「初代大臣が石破さん、どこに問題があったのか?」と皮肉交じりに質問した。石破氏は「地方の中小企業は黒字でも、後継者がいないから会社をたたまざるを得ない。人が帰ってこないことが最大の問題だ」として農業、漁業、林業などの付加価値を高める具体策の必要性を力説した。

この地方創生論議で目立ったのは「トリクルダウン」をめぐるやり取り。大企業や富裕層による景気拡大は時間とともに中小企業や中・低所得層に広がるという考え方だが、石破氏は「(日本は)経済のメカニズムが違う、違和感がある」と指摘すると、首相は「私はそんなことを一度も言ったことはない」とアベノミクスとトリクルダウンの関連づけを否定したうえで、「東京の経済が良くなれば地方の農産物の価格も上がる」と反論した。

挑戦者の石破氏が最初に取り上げたのはやはり、首相の政治姿勢。「民主主義のあり方について伺いたい」と鋭い目で首相を見やり、相次ぐ重要法案の採決強行や森友・加計学園問題での説明不足について「(政治は)いかに少数意見を尊重するか、(疑惑について)誠実に国民に説明するかが重要」と姿勢転換を迫った。

これに対し、首相も表情を引き締めて「石破さんのおっしゃるとおり」と同意した上で、石破氏が指摘した森友問題での公文書改ざんなどについて「国民の不信を招いたのは私の責任、改めておわびしたい」と殊勝な態度で追及をかわした。

両氏の厳しい応酬となったのは首相が持ち出した憲法での自衛隊の位置づけだった。首相は「(安倍政権は)自衛隊は憲法における軍隊ではないが、国際法的には軍隊であるという立場だ。石破さんが総理になった時は、自分の主張に合わせて変える考えか」と質した。これに対し石破氏は「必要最小限度だから戦力ではないという考え方は国民の理解を妨げる。国内においては違うが、国外においては軍隊だというのは国際的にまったく通用しない」と反発した。

首相「9条改正での石破氏の主張は非常識」

自民党内の改憲論議でも石破氏の主張する戦力不保持を明記した憲法9条2項の削除論には一定の支持がある。しかし、首相は「国際社会的には十分軍隊として認められている。それを軍隊でないと言うほうが、国際社会的には非常識だ」と強い調子で反論した。

このやり取りの延長線上で、その後の質疑でも首相が意欲と決意を示した自衛隊明文化を軸とする憲法改正の是非が議論となった。石破氏は「国民にきちんと説明しないままの憲法改正は、やってはいけない」と食い下がったが、首相は「政治家は学者でも評論家でもない。正しい論理を述べていればいいということではない」と"上から目線"で石破氏の主張を退けた。

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