マレーシアに留学する日本人が急増したワケ

就職活動で「新興国」の経験が評価される

石川さんも「今はアジアを視野に入れた日本企業が増えています。マレーシアの大学の卒業生は英語が使えるし、多国籍の人とコミュニケーションができる。マイナーな新興国を選択して飛び込んでいったチャレンジ精神もある。それにざっくりした指示で動ける人が多いんですよ。僕の会社でもできることなら採用したいなと思う学生が多い」と付け加える。どういうことか。

「1から10まで説明しなくても動ける。新興国ではこの精神性がないと何事も動きません。大学でも、単位の配分は自分で考えて選ぶ。専門家に相談しても、答えがあいまいだったり、誰に聞いても違った答えが返ってくる世界です。つまり、自分で資料を見て自分で一個一個把握していくしかない。ミスしても自分の責任です。

わからないところをピンポイントで質問し、他人から言われたことを鵜呑みにしない精神性が身に付くんでしょう。多くの大学ではインターンシップが卒業に必須条件となっているのも大きい」(石川さん)

本橋さんは、苦境に陥っている実在のリゾートホテルを例に、マーケターとしてビジネスプランを作る課題をした。「消費者がどうホテルを選ぶか、なぜ旅行するのかなどリサーチをして、提案し顧客を呼ぶためのアドバイスをします。財務諸表を見てここは利益が出てないな、とか分析できる。プレゼンや論文も多い。コミュ力もつきます。来てすごくよかったです」。

観光学部に入った土戸さんは1年目からバスツアーを企画。実際に予定を組んで家族や先輩・後輩をマレーシアに呼んだ。

松野さんのビジネス学部にはマーケティングの授業があり、実際に学校で模擬店を出して、商品決めからターゲットの選択、どれだけの数を売るかを決めて実践する。「もともと、工学部でものづくりをしたかった。けれど自分は物を売るほうが得意だし、好きだな、と気づきました」と話す。

「毎日がカルチャーショックだった。コミュニケーションの仕方が全然違います。来たときは、同じ年の学生のプレゼンが僕より全然うまくてショックだった。ローカルの子たちは高校生からやってるからレベルが高く、うらやましい。ほとんどのマレーシア人が数カ国語できるのを見たのも衝撃ですね。育った環境でここまで違うかと」と話す。

前向きな学生が集まる東南アジア

取材して感じたのは、マレーシアに来ている学生は、そもそもの資質がリスクテイカーで周りに流されず、自分の意見を持っているタイプが多いのではないかということだ。“なんとなく生きている”タイプの人が少ないのだ。

石川さんは、いま東南アジアにいる学生はアグレッシブで人生に前向きなタイプが多いが、一方で環境の影響もあると話す。

「来るときに自信がなかった子も自信をつけて卒業していくことが多いですね。相談に来る日本の学生は大体、9割がモラトリアムで、進路に迷っている。それがマレーシアに来ると、ゼロから自分をスタートできる。英語になじむまでが大変ですが、そこを超えると急に語学ができ外国の友人ができて、ばーんと視野が広がる。すると、日本だけの選択肢だった人たちが海外でもいけるかな、となる。視野が広がって自信が生まれるんですよ」

土戸さんは「日本にいたら? 周りに流されて毎日ゲーム、バイト、お酒だったかもしれません。日本にいると自分の時間を生きてないし、自分の好きなものにすら気づけない。中学の進路相談の先生は、君の学力ならこの高校じゃないかと言う。要するに成績だけで、個人を見てないんです。生徒も大学で何を学びたいかはない。就職活動も、企業に入るためで、入り口しか見てない。マレーシアはそうじゃなく、自分の好きことに向き合える」と話す。

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