マレーシアに留学する日本人が急増したワケ 就職活動で「新興国」の経験が評価される
「学外でもアイデアを集めて実現する自由がある。実際に、企業や人、政府とのイベントも実現しました。僕はこの後インターンシップをやって卒業ですが、進路はギリギリまで決めたくない。今言えるのは、来てよかったということ。あのときの背伸びは正解でした」と目を輝かせる。
サンウェイ大学1年生の藤山華梨衣さんは、まだマレーシアに来て数カ月。英語が好きで、日本の高校でも国際コミュニケーション学科にいた。「と言っても実際には日本語で英語を勉強しているだけで、来た頃はインドネシア人やネパール人の英語が聞き取れなくて苦労しました。今は、広告やソーシャルメディア、アカデミックな英語の書き方を学んでます。授業が終わってすぐ図書館に行き夜中の2時まで勉強。でもめちゃめちゃ充実していて、親にも楽しんでるね、って言われます」と話す。
HELP大学の松野さんは、日本の高専で工学を専攻していた。ビジネスに転向したいと文転を考えたが、16歳から理系だったため難しかった。海外の大学だと理系の単位で文系に入れる。またイスラム金融に興味があり、マレーシアを選んだ。
「英語は中学で止まっていたが、大学の語学コースで半年間英語漬け。最後は英語で夢を見た。ビジネス学部では1年目から会計もマクロ経済もミクロ経済も全部やる。アカデミックな文章の書き方には、ハーバード・スタイルなどそれぞれ規格があり大変厳格です。僕は日本でも論文を書いていたので、ここまでやるのか、と。日本の学校を知っている人ほど驚きますよ」と話す。
本橋恵美さんが学ぶモナッシュ大学マレーシアはオーストラリアの有名大学の分校だ。「高校のとき、フィリピン英語学校やケンブリッジ大学の短期留学を通じ、自分の意見を言えるようになりたいと留学を決めた。東南アジアならほかの留学生とは違った経験、ユニークな経験ができるかなと。ここはオーストラリアと同じ教育プログラムで費用が安いんです」と話す。「最初は英語が聞き取りにくいうえに課題の理解、リサーチが大変だった。テスト前は1日12時間勉強しました」とハードな学生生活を送っている。
マレーシアの大学は多様だ。中には欧米大学の卒業資格が取れたり、数年マレーシアで過ごし、その後欧米の大学で過ごすトランスファープログラムもある。また、2つの大学の学位が同時に取れるダブルディグリーも可能。世界規模での大学同士の繋がりがあり、大学間での単位のトランスファーが容易だ。たとえば、インティ大学からハーバード大学に行きたい、などという場合も、実力さえあれば組み立ててもらうことができるのだそうだ。
グーグル、楽天――評価される新興国での経験
マレーシアの大学を出た場合、気になるのがその後の就職だ。以前、海外の大学を出た卒業生は、日本企業には敬遠されると聞いたことがある。石川さんに聞くと、驚く返事が返ってきた。
「(サポートした学生たちは)ほぼ100%が日本で就職できています。それも第1希望が多いです」。海外で就職しにくいのには、新卒だとビザが出にくいという問題があるためだ。
モナッシュ大学マレーシアの本橋さんは、「まだ卒業生は少ないですが、先輩たちは銀行やグーグル、楽天など、大手に決まっています」と話す。
「マレーシアには周りに流されず、自分の力でうまく情報をゲットした人が来てるんじゃないでしょうか。それに、英語だけじゃなく、アジアの人たちと実際に仕事ができる能力が評価されているんじゃないでしょうか」
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