ヤマト「引っ越し過大請求」に見る低いモラル 「組織ぐるみ」の不正も発覚、風土改革が急務

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YHCの引っ越しサービスは、宅配便の路線網活用を前提に法人向け長距離引っ越しをターゲットとして開発された。槙本氏は、ヤマト運輸頼みの営業体制にも問題があったと指摘する。「ヤマト運輸に営業力があるから、努力しなくてもいい。受注は宅配便の顧客で取れるところから取ろう」。YHCの元経営陣にはそんなことを言ってはばからない社長もいたという。 

後ろ向きなお詫び行脚

過大請求を行った企業へのYHCのお詫び行脚は今も続いている。謝罪にはヤマト運輸の支店長クラスが同行しているようだ。引っ越しと宅配便で法人顧客の基盤が重なっているため、宅配便の顧客離れを防ぐことが目的だろう。ただ、「お詫びへの同行も上から下に押し付ける形で、もはやお詫びの内容や顧客の反応に興味はなく、何件行ったかということに力点が置かれている」(ヤマト運輸社員)。

別のヤマト運輸社員が閉口するのは、今回の問題での役員に対する処分の甘さだ。一番重くてもYHCの前の社長2人の降格処分で、ほかは減給や役員報酬の自主返納にとどまる。

「グループの最底辺」と言われるYHCの低い地位とも無縁ではなさそうだ。YHCの売り上げはグループの3%ほどにすぎず、ヤマトHDからの監視の目も行き届いていなかった。分社化で設立されたYHCは社員の待遇は低く、グループ他社との人事交流はほぼなかった。不正拡大を招いた企業風土の問題は根深い。

山内社長は全社の総点検を進めるとするが、実効性のある対策が取れるのか。グループ79社で社員21万5000人にまで膨れ上がった巨大物流企業は岐路に立たされている。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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