ヤマト「引っ越し過大請求」に見る低いモラル 「組織ぐるみ」の不正も発覚、風土改革が急務

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報告書によると、「運用が非常に煩雑で困難」「マニュアルでは見積もり内容の修正をどのタイミングでどの方法ですべきか示されていなかった」という。「見積もりの修正をしないことが当たり前になっていた」(ヤマトHDの大谷友樹常務)。結果的に全国128拠点のうち、123カ所で過大請求が行われていた。

内部管理体制にも欠落があった

採算性についても商品開発段階で十分に考慮されてはいなかった。YHCのサービスは家財量のポイントを料金の算出基準としているため、繁閑の差に合わせた見積もりが困難だった。その中で繁忙期には割引率の高い法人案件が多いこともあり、採算確保のため、上乗せ見積もりが行われていた。実際に中国統括支店傘下の支店長は「2トンだったら、3トンで見積もれよ」といった指示を出していた。

ある競合幹部はYHCの料金について「以前から高いと思っていた。引っ越しに力を入れている印象はなかった」と指摘する。山内社長は「競争環境や人件費などが変化する中、価格設定の見直しができていなかった」と反省の弁を述べた。

ただ、問題は商品設計だけではない。内部管理体制にも欠落があった。過大請求問題を外部告発した元高知支店長の槙本元氏は「法人契約を全社的に管理・監督する本社組織が2012年になくなり、チェック機能が利かなくなった」と指摘する。本社は商品設計を行うが、サービスの運用は現場に近い各統括支店以下に権限を委譲した。その結果、「各支店が好き勝手にやるようになった」(槙本氏)。

高知支店はある法人顧客から今年4~5月に121件の引っ越しを受注したが、119件で組織ぐるみの過大請求を行っていたと認定された。高知支店を統括する立場にある四国統括支店長も黙認していた。統括支店は全国に11あるが、東北、東京、関西、九州の各統括支店でも組織的な不正と見なせる水増しが確認された。

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