どうする不要な公共施設、遅ればせの規制緩和、官庁の縄張りが障害
今、少子化、過疎化や自治体の合併などによって、地方に一つの問題が起きている。それは不要になり、お荷物となった“箱モノ”公共施設の増加である。たとえば、市町村が合併すれば、一部の庁舎は当然不要となる。また、集会施設も同様だ。
特に1988、89年度の「ふるさと創生資金」以来、88年度「ふるさとづくり特別対策事業」、90年度「地域づくり推進事業」、93年度「ふるさとづくり事業」、最後の99~2001年度「地域活力創出プラン関連事業」まで地方への補助金バラまきが展開され、地方財政を深刻化させる“箱モノ”が多数建設された。
こうした施設としては、たとえば「○○文化会館」(所管は旧文部省)、「○○ふるさと会館」(農林水産省)、「○○福祉会館」(旧厚生省)などがあり、施設の名称によってどの官庁が補助金を出したかがわかるようになっている。
不要な施設が全国に存在
一連のふるさと事業のために積み上がった「地域総合整備事業債」による自治体の借金は、00年度末で11兆2700億円に膨れ上がった。
不要な公共施設を抱え続ければ、非効率なうえ、今後も維持経費がかかるので、自治体が転用や売却を考えるのは当然だ。たとえば「利用されなくなった公民館を地域産業おこしの拠点に転用したい」「市町村合併で不要になった保健所の建物を教育関係施設に転用したい」「市町村合併で不要になった廃棄物処理施設を廃棄したい」「統廃合で不要になった出張所の建物を民間に売却したい」などの要望が実際に出ている。
だが、これが簡単ではない。
国の補助金を使った施設(補助対象財産)を当初の目的と違った用途に転用したり、譲渡、貸し出し、取り壊しなどの処分を行う場合は、定められた耐用年数を過ぎるか、あるいは補助金を受けた事業者(具体的には市町村)が補助金を全額国に返還しなければならなかったからである。これは「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(補助金適正化法)に定められている。
しかし、耐用年数は、鉄筋コンクリートで50年と非常に長く、現実にこの条件を満たすことは難しい。また補助金の返還も、自治体財政の実情を考えれば、事実上不可能だ。
この法律にも、使われた補助金を管轄する大臣の承認があれば、転用などの処分ができるという規定はあるのだが、学校施設などの例外を除き、承認を得るのが容易ではなかった。つまり制度はあっても、事実上処分は極めて困難だったのである。
補助金の源泉は税金だから、補助金を使った施設をいいかげんに処分してはならないのは当然だ。だが、明らかに合理的な転用でも、これまではほとんど認められなかった。
ところが最近、硬直化し、現状に合わなくなっていた補助金適正化法の運用に風穴が開いた。今年3月、補助金等適正化中央連絡会議幹事会(事務局は財務省主計局)で補助金など適正化法第22条の運用の規制緩和が了承されたのである。
その要点は、【1】10年経過した補助対象財産は、補助の目的を達成したものと見なす、【2】そうした財産処分の承認は、原則として報告書の提出で国の承認があったものと見なす、【3】承認の際、用途や譲渡先について差別的な取り扱いをせず、国庫納付を求めない(ただし有償の譲渡や貸し付けの場合には、国庫納付を求めたり、報告書の提出を求めるなどの条件を付けることができる)、【4】10年経過前であっても、災害による損壊など、補助事業者に責任のない理由による財産処分や、市町村合併、地域再生などの施策に伴う財産処分については【1】と同様に扱う。すなわち、原則不許可から原則承認へという大転換が行われたのである。
では、これで問題がすべて解決したのかというと、そうではない。まだいくつかの問題がある。