村上春樹と作品中の「音楽」の"意外な関係" 日本人で唯一、取り上げられたスガシカオ

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人々の音楽との接し方もずいぶん変わった(撮影:山田智絵)

ただ、近年になると作品における音楽の扱いが、次第にぞんざいになっていくと栗原さんは指摘する。

ファンの間でも“次は何が出てくるか”と予想し合うようになりました。そんな風潮に簡単に乗りたくなかったのかもしれません

人々の音楽との接し方もずいぶん変わった。

「以前は、春樹作品で取り上げられた曲をレコード店で探したりしましたが、いまはネットで検索できて、音源まで聴けてしまいます。音楽にアクセスしやすい時代になったんです。

実際、本書で紹介した曲は『Spotify』(インターネットを使った音楽配信サービス)に『村上春樹の100曲』としてまとめてあるので、誰でも聴くことができますよ」

音楽を聴きながら分け入る村上春樹作品

今年の8月5日には、春樹が初めてラジオDJに挑戦する番組『村上RADIO』がTOKYO FMで放送され、ファンの間で話題を呼んだ。

『村上春樹の100曲』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

本書をきっかけに、さまざまなジャンルの音楽を聴きながら、村上春樹の作品の森に分け入ってみてはいかがだろう。

栗原裕一郎さんは労作『〈盗作〉の文学史』をはじめ、資料を丹念に集めて読み解き、「常識」とされてきたものを見直す仕事をしてきた。

「音楽でも文学でも評論には、もうちょっと役に立つものを書いてほしいという気持ちがあります、エビデンス(証拠)を押さえるとそこには批評性が生まれます」

調べる労力に対して、お金や評価で報われることは少なく、「もう疲れた」とボヤきつつ、今後もジャンルにこだわらず、掘り下げていきたいと語った。

栗原裕一郎(くりはら ゆういちろう)/1965年生まれ、神奈川県出身。評論家。文芸、音楽、社会問題など多岐にわたって執筆。著書『〈盗作〉の文学史』で第62回日本推理作家協会賞受賞。共著に『バンド臨終図巻』『石原慎太郎を読んでみた』『本当の経済の話をしよう』など。

(文:南陀楼綾繁)

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