村上春樹ファン、いわゆるハルキストたちが待ちに待った2月24日が目前だ。村上春樹の新作長編小説『騎士団長殺し』が発売になるこの日は全国の書店に新作が山積みとなり、待ちきれないファンが書店の前に行列を作るという、ここ数年恒例の風景が再び展開されるに違いない。
これは例えてみればiPhoneの新製品発売にも似た社会現象のようなもので、村上春樹人気のすさまじさを改めて認識する出来事だ。すでに報道されている情報によれば、初版の印刷部数は上巻下巻各50万部の計100万部。出版不況もどこ吹く風といったこの途方もない数字が大きな話題となり、「そんなにすごい人気なら私も読んでみたい」と思い至る日本人の好奇心を刺激して、部数はさらに拡大することだろう。
なぜ村上春樹の新刊を待ちわびるのか
この話題の新刊を待ち望んでいるのは村上春樹ファンばかりではない。なんとクラシック音楽業界の面々が、新作の発売をかたずをのんで見守っているのだ。その理由は過去2作品の内容とその影響力にある。村上春樹の著作といえば音楽の登場が定番。特にクラシックとジャズは過去の著作の中でもかなり重要な役割を担っている。すでに『「村上春樹」を聴く。』『村上春樹の音楽図鑑』(ともに小西慶太著)など、村上春樹の著作に登場する楽曲やアーティストを網羅して解説するような本まで出ているのだからその頻度と密度は半端ではない。
この状況にクラシック業界が本気で注目し始めたきっかけが、2009年に発売された3冊からなる長編小説『1Q84』だ。この物語の中で重要な役割を担って登場する楽曲ヤナーチェク作曲の「シンフォニエッタ」は本の発売と同時に話題となり、CDショップでは売り切れが続出した。
といっても、もともとほとんど在庫のない商品であったわけだが、かなりのクラシックファンでなければ曲名すらも知らないマイナーな曲「シンフォニエッタ」が、クラシックチャートの上位を占めるほどの人気曲となったことは驚き以外の何物でもない。
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