名列車「雪月花」を生んだ男たちの熱いドラマ 理想と現実を両立させるための「極限の戦い」
デザインを重視したゆえの悩みも
雪月花のデザイン性と座席設定は特徴的である。設計段階での座席編成をみると、パブリックスペース偏重の列車であることがわかってきた。
2号車はハイデッキスペースを半個室として設置。次いでボックスタイプの座席として通路を挟んで4人ボックス席と2人ボックス席を配置し、計22人の座席となった。新造車両のメリットを生かす特徴として、反対側に向き合う座席の間に窓枠を完璧に設置させている。改造車で苦労する、座席の設定をいかに自然に見せるかを気にする配置ではない。座席の設計を組んでからの車体設計である。
さらにデザイン性が高いのが1号車の座席配置である。全方向が進行方向片側を向いている。非常に明るい雰囲気のスペースで、後に内外多くのデザイン賞を受賞することとなる雪月花の、その主要因の1つは、この1号車内部の大胆なデザイン性であるといわれている。
とはいえ、デザイン性を重視したあまり、販売の観点では悩みもある。私の上司のラインにJR西日本から出向で来ていた販売課の石坂強課長がいる。本来、かなり短気なようだが、それを分厚い包容力で押し殺したような人格者であった。
それはさておき、石坂課長は、鉄道営業についても相当の知見があるほか、販売関係についても知識と経験のあるベテランである。往年のトワイライトエクスプレスの座席差配に辣腕を振るったこともあると聞いている。
この石坂課長と、座席のレイアウトをしばらく眺めていたことがある。その際に石坂課長は「うーん。やはり売りにくい席だな」と、つぶやいた。
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