名列車「雪月花」を生んだ男たちの熱いドラマ 理想と現実を両立させるための「極限の戦い」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そう。デザイン重視になると、座席提供に難しいところが出てくる。1人席、2人席、3人席、4人席が併存している状況で、席ごとに特徴がある。個人客であれば悪くないのであるが、旅行会社に渡すことを考えると不安もあった。

1号車は日本海側と妙高山側を向くラウンジ形式の座席配置(撮影:尾形文繁)

乗車したことがない添乗員にとって、雪月花1号車の座席は自ら利用したことのない店で重要な商談の場を設けるようなものであろう。不安を感じるかもしれない。心配な点が尽きなかった。

座席数確保の問題

販売力に直結するのは提供座席数である。提供座席はあればあるほどいい。そして、単純に同じものがあればあるほどやりやすい。それが販売部門の本音だ。それぞれの座席に特徴を持たせると、それだけオペレーション側で苦労する余地が増えてくる。

ほかの事例をみると、デザイナーを入れずに直営で設計をやっている観光列車もあるという。そういったところは販売側の意見がとても通りやすい車両設計になると聞いている。一方でデザイナーを入れないと、見た目のインパクトには不利となるところがあると思うのだが、それは、その会社ごとのポジショニングの考え方次第といったところだろう。

そんななか、かなり設計が進んでいた段階で、目玉として期待していたハイデッキ席が当初の5席構想から4席に減る、という話が出てきた。椅子の強度や動線確保などの理由である。これについては、雪月花のデザイナー、川西康之氏と相当の見直しを行った。

現在のハイデッキの座席は2人ずつ向かい合わせになった4席であり、好評である。今のイメージでは、あのスペースにもう一席確保することは、現実的には難しかったのかもしれない。しかしながら、運行回数の少ない雪月花で人気が出る座席が減ることには、少なからず不満があったことも事実である。

雪月花を製造する新潟トランシス側と協議を進めていくなかで、デザインだけではない、リゾート列車の全容が理解できるようになってきた。

次ページ不要不急の電気機器の見直し
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事