意外だったのは、津軽半島から北海道へ里帰りしている人が少なくないことだという。8月の夏祭りとお盆の時期、道南や札幌への切符が奥津軽いまべつ駅でもよく売れる。駅前の駐車スペースにも連日、30台ほどの車が並ぶ。
石沢駅長が地元の人に尋ねると、北海道から嫁いだ人たちがこの時期、帰省のため北海道新幹線を使っているのだと教えてくれた。「開業前、北海道新幹線といえば、首都圏や東北と人が行き来するイメージしかなかった。しかし、津軽半島と北海道の人の動きが見えるようになった」と石沢駅長。その縁は、津軽半島の将来像をどう変えていくのだろう。
道南とのつながりをめぐっては、外ヶ浜町役場でも興味深い話を聞いた。津軽海峡線の開業と前後して、津軽半島と道南の交流が活発化し、旧三厩村と福島町、旧蟹田町と木古内町、旧砂原町(現・森町)との姉妹・友好関係が生まれた。その後、平成の大合併に伴って、これらの連携は解消されたが、2015年、外ヶ浜町と森町があらためて、しかも民間が主導する形で友好町となった。
森町サイトによると、旧砂原町は1532年、旧蟹田町出身の「権四郎」という人物が移住・開村したとされる。この縁を守る交流団の活動が、友好関係の復活につながったというのだ。
路線バスで絆の復活も
このほかにも、津軽半島を東西に結ぶ「つながりの復活」を試みる動きがある。
津軽半島の陸奥湾沿岸は、岩木川流域の五所川原市や中泊町から嫁いだ人が少なくないなど、両地域間には古くからの絆が存在する。しかし、道路網や鉄道網が南北に連なっている事情もあり、両地域間の一体感は希薄になっている。むしろ「最近、近くて遠くなった間柄」といえる。
北海道新幹線開業にあわせて、その恩恵を津軽平野一円に及ぼそうと、奥津軽いまべつ駅と津軽鉄道の終点・津軽中里駅の間に、開業日から1日4往復の路線バスが運行されている。所要時間は約1時間、片道1200円ながら各種の割引制度も導入されている。JR津軽線や北海道新幹線から、津軽鉄道を経由して五所川原市、さらには弘前市方面にも乗り継げる。
実は筆者は、バスを運行する協議会の委託を受け、2017年10月から2018年年3月にかけて、利用実態を調査した。詳細は本稿では割愛するが、奥津軽いまべつ駅を起点に行き来する人の流れが、津軽半島のみならず、北海道から西日本まで予想をはるかに超えてバリエーションに富んでいる実態を把握できた。
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