営業から運用、調査と意外に広い保険の仕事【損保編】
小笠原流礼法を学び 究極の接客術を展開
水谷氏が醸し出す雰囲気は、外回りの営業マンを感じさせない。スーツを着こなすその背筋は、ぴんと伸びている。上品な身のこなしや落ち着いた話し方は、高級ブティックの店員かホテルのフロントマンと見まがうほど。
レクサスはトヨタが自信を持って打ち出した高級国産車ブランド。保険もあいおい損保が出している「レクサスオーナーズ自動車保険」という専用の商品がある。数ある自動車保険商品の中で、自動車のブランド名を冠した保険商品はこれだけだ。
トヨタにとって特別な存在だからこそ、レクサスの販売員はもちろんのこと、店舗に出入りする業者にも“最高級の雰囲気”が求められている。水谷氏はレクサス販売店の営業担当になる前に、小笠原流礼法の研修を受け、“おもてなし”の作法を徹底的にたたき込まれた。
「レクサスの顧客は大企業の経営者などが比較的多い」(水谷氏)。裏方業務が中心で、滅多にお客様の前に出ないとはいえ、保険の営業マンもまたトップレベルの接客マナーを身に付けることを要求されている。
都内に13店舗あるレクサス店を、水谷氏ともう一人の営業マンでフォローする。通常のディーラー営業なら一人で最低でも30店を担当するというから、レクサス店への処遇がいかに手厚いかがわかる。水谷氏は毎日のように都内のレクサス店を回り、販売員に商品知識を教え、接客や販売方法のアドバイスをする。
普通のディーラー営業では考えられない仕事もある。「直接、お客様に商品内容を説明したり、納車に立ち会ったこともある」(水谷氏)。10年間、ディーラー営業をしてきたとはいえ、どれもこれも経験がなかった。それでも、「お客様から100を求められたら、120を返す」(水谷氏)。それがレクサス流だという。
水谷氏は「レクサス店で経験したことを、一般ディーラーの営業手法にも水平展開したい」と考えている。レクサス店営業だろうと、通常のディーラー営業だろうと、代理店に対する指導力は同じレベルであるべきだと考えているからだ。今後、水谷氏は人材開発の部署へ異動し、10年以上の営業経験で学んだことを次の世代に伝えたいと、意気込む。ただ、「最後には営業に戻りたい」(水谷氏)と、営業の仕事に人一倍の愛着を持っているようだ。